箱根湯本 平賀敬美術館
※平賀敬美術館は2018年8月15日をもって廃業しました。
美術館で箱根湯本の名湯に遭遇
源泉は老舗旅館「萬翠楼 福住」と同じ!
「箱根の美術館で温泉に入れる」と聞いて、以前からとても気になっていました。今回、井伊湯種が訪れた平賀敬美術館(ひらがけいびじゅつかん)は、アバンギャルドな独特の画風で世界的評価を受けている、現代画家の平賀敬氏(1936年-2000年)の個人美術館。平賀敬(以下敬称略)が晩年過ごした邸宅を美術館として生かしています。
玄関で呼び鈴を鳴らすと、やや間を置いて平賀敬夫人の幸さんが現れ、館内を案内してくださいました。
ご夫妻の住まいをそのまま美術館として開放しているため、まさに画家のお宅にお邪魔するという雰囲気です。館内は伝統的な日本建築の様式美が感じられ、廊下をはじめ、館内のいたるところに平賀敬の作品が展示されています。
平賀敬美術館の建物は築100年以上を経た日本家屋。もともとは寛永2年(1625年)創業の老舗旅館「萬翠楼 福住(ばんすいろう ふくずみ)」の別荘として、明治時代後期に建造されたもので、井上馨、山縣有朋、近衛文麿など、明治の元老・重臣たちが逗留していた由緒のある建物です。当時のしつらえを今に伝え、2003年には国の登録有形文化財に指定されました。
館内にはもともと3つの浴室があり、古くは内閣総理大臣などの政府要人、お付きの武官、お付きの女中用にそれぞれ用意されていたそうです。
平賀敬美術館では現在、1室のみ浴室利用をしており、政府要人のために造られたという「第二号浴室」を貸切で利用できます。
別名「殿様風呂」とも呼ばれる浴室は脱衣所一体型で、大人2人が入ればいっぱいになるような湯船が一つ置かれています。天井を見上げれば、今ではめずらしい「傘天井」。床にはスペインから取り寄せた大理石が敷かれ、お湯をオーバーフローさせれば、寝湯もできます。
レトロとモダンが融合した空間で楽しめるのは、箱根湯本温泉の名湯。源泉は浴室のすぐそばから自然湧出しており、老舗旅館「萬翠楼福住」所有の湯本3号です。
アルカリ性単純温泉で源泉の温度は42.4℃。入浴にちょうど良い湯温のため、加水も加温もせずに源泉そのものをかけ流しで堪能できます。
身体をすっぽり包み込むようなやわらかなお湯はフレッシュ。つるつる感が感じられ、やさしい肌触りのお湯は上質で長湯がしたくなります。
また、印象的だったのは浴室の窓。窓枠に鉄格子が嵌められていて、これは政府要人を暗殺者から守るために厳重な造りになっているそうです。
かつて政府の要人が利用していた浴室で、歴史に想いを馳せながらの湯浴みは最高のひととき。美術館で温泉に入れるだけでもめずらしいと思っていたのに、こんな素晴らしいお湯に出逢えるなんて夢のようです。
湯上り後は平賀敬のビデオや資料が閲覧できる部屋へ。2間続きになっており、「雨」などの代表作が展示されています。来館者はここでお茶やお菓子をいただきながら、平賀敬の世界に親しむことができます。
庭に面した廊下にはイスとテーブルが置かれ、ここでもくつろぐことができます。曇りガラスの意匠や照明も洒落ています。
また、館内の奥には「石の蔵」というギャラリーが併設されており、ここにも平賀敬の作品が展示されていました。貸しギャラリーとしても利用できるそうですので、詳細は平賀敬美術館にお問い合わせを。
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