箱根湯本温泉 萬翠楼 福住
宝物の温泉は神様からの預かりもの
重要文化財の宿で堪能する真綿の湯
箱根湯本温泉で江戸時代から続く老舗旅館「萬翠楼 福住(ばんすいろう ふくずみ)」。創業は寛永2年(1625年)、江戸時代には旅人や湯治客で賑わい、明治時代には木戸孝允、伊藤博文などの政府要人や福沢諭吉などの文化人が逗留した湯宿です。
明治初期に第10代当主によって建造された「萬翠樓」と「金泉樓」は伝統的な数奇屋風の日本建築と西洋建築を融合し、意匠を凝らした建物。2002年に現存する貴重な擬洋風建築として、現役旅館の中では初めて国の重要文化財に指定されました。「萬翠樓」と「金泉樓」の客室には宿泊もできます。
萬翠楼 福住の魅力は重要文化財の建物だけでなく、自然湧出の温泉。
敷地内に湯本3号という自家源泉を所有し、湯本でも希少な横穴式の自噴泉をそのまま湯船に注ぎ込んでいます。しかも源泉の温度が42.4℃のため、人の手を加えずに自然の恵みのまま、かけ流しで楽しめるのです。
第16代当主の福住さん曰く「建物も重要ですが、萬翠楼 福住の原点はお湯なのです。温泉こそ宝物で、神様から授かったのではなく、お預かりしたものと考えています」
萬翠楼 福住が宝物として、古くから大切にして守ってきたお湯は「真綿の湯」。クセのないやわらかなお湯が真綿のように身体を包み込み、身体の芯から温めます。
しかもぬる湯でゆっくり入ることができ、湯疲れしにくいのが特長。泉質はアルカリ性単純温泉で、つるりとした肌触りのやさしいお湯です。
萬翠楼 福住の大浴場は「一円の湯」と「扇の湯」があり、男女交代制で利用できます。
「扇の湯」の檜の露天風呂は2008年に新設されたもの。心地よいお湯と檜の香りに包まれ、心身ともにほぐれていきます。
天井画が見事な明治棟「萬翠樓」15号室
最後に重要文化財に指定された明治棟「萬翠樓」の一室を案内していただきました。48枚の天井画で知られる15号室は萬翠楼 福住にとって特別な部屋。庭に面し、4室で構成された30畳の和室です。
10畳の本間には花鳥風月を中心に48枚の天井画が描かれ、圧倒されます。また、明治時代の職人による建具が見事。柱や窓、障子格子など、さまざまなところに細工が施され、一見の価値があります。
室内は自然光で美しく見えるように造られているため、電気を消すと建造当時の趣を楽しむことができます。電気を消すと金箔はより映え、障子格子は陰影を増し、より美しさが映えます。
こうした楽しみ方ができるのは重要文化財の宿ならではだと思います。
より大きな地図で 温泉グルメ探訪 を表示