大和館(大和旅館) 箱根湯本温泉
上質な源泉かけ流しを楽しめる家庭的な湯宿
江戸時代から続く老舗旅館で「箱根最古の湯」を堪能
箱根七湯発祥の地、箱根湯本湯場地区。箱根最古の湯と言われている「惣湯」は、熊野神社の社殿の下から今も湧き出しています。その熊野神社近くの路地にひっそり佇む大和館(やまとかん)は、江戸時代から続く老舗旅館。現在は日帰り温泉&素泊まりの宿として営業されています。
大和館は井伊湯種(いいゆだね)が大好きな昭和の香りのする湯宿。歴史のある源泉を味わえるため、温泉マニアにはたまらない宿なのです。
玄関から声をかけると、「はーい」と暖簾の奥から女将さんの明るい返事が。きさくな女将さんは、あたたかい雰囲気で宿の温もりを感じます。
以前からこの宿の正式名称が大和館なのか大和旅館(看板が大和旅館なので)なのか気になっていました。今回、女将さんにお話をうかがい、大和館であることが判明。長年の疑問が解消されスッキリした湯種でした。
大和館は江戸時代に湯治客をもてなした木賃宿が始まり。「昔の話になりますが、湯治のお客さまは3週間位滞在するわけです。お金を持っていない人が多く、あまり儲からなかったようです。お伊勢参りの時に箱根に立ち寄るお客さまは一夜湯治で羽振りがよかったみたいですね」と女将さん。
宿の蔵から発見された江戸時代の「箱根関所日記抜書」の中にも、大和館が登場しているそうです。歴史が感じられますね。
現在の建物は大正時代(関東大震災の前)に建て直しをしたもの。館内には見事なけやきの箪笥階段など、明治時代のものも残っています。
「温泉は生き物だから、手は加えない」という湯遣い
ロビーの右手奥にお風呂が3つありますが、取材時、使用していたのは大浴場1つと家族風呂1つでした。
日帰り温泉では、空いていれば1時間の貸切風呂として利用できます。
まずは大浴場に入ってみました。レトロな湯船とタイルが素敵で湯種好み。昭和30年頃につくられた浴室ということですが、よく手入れをされていて、明るく開放感のある浴室です。
源泉は、隣接する熊野神社からこんこんと湧き出る箱根最古の源泉「惣湯」(湯本第9号泉)をはじめ、湯本第7号・41号泉の3本の混合泉を利用しています。3本の源泉はいずれも歴史ある箱根湯本の共有源泉。「温泉は生き物ですので、冬のみ加温をすることがありますが、基本的には手を加えません」と女将さん。
また、箱根湯本の源泉は明治中頃まで「惣湯」1つだけだったと言われており、歴史を知れば知るほど、感慨深いものがあります。
お湯は無色透明でまろやか。歴史ある源泉を自然のままのかけ流しで楽しめるのですから、とても贅沢。
お湯は湯船の中から投入され、空気にふれないため鮮度も上々です。泉質は弱アルカリ性単純温泉。肌にやさしくしっとり馴染みます。
大浴場の脱衣所は洗面台のタイルがレトロで、古いものが好きな人にはたまりません。
大浴場の隣には家族風呂があり、明治時代頃から残る浴室です。今では珍しいタイルも当時のまま。ライオンの湯口も良い味を出しています。
大和館には常連のお客さまが多く、温泉マニアを惹き付けるのは、その湯遣いの良さや宿の雰囲気だと思います。
大和館近くの住吉旅館のお湯も好きだったのですが、現在は営業されていないようで残念です。それだけに大和館の存在は貴重。素泊まりですが、1人で宿泊することもできますし、また近いうちに伺おうと思った湯種でした。
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