塔ノ沢 一の湯本館 箱根塔ノ沢温泉
箱根で100年続く芸者芸能を
380年続く温泉宿で体験
夕食は箱根山麓豚などを使った
一の湯の創作料理
花柳界(芸者の世界)は江戸時代中期頃から盛んになったと言われ、箱根で最初に花柳界が生まれたのが約100年前。それが一の湯本館が位置する塔ノ沢でした。
現在は箱根湯本に「湯本見番」という30もの置屋(おきや)が加入している芸能組合があります。
一の湯の「芸者芸能体験プラン」は1人でも多くの方に箱根で100年続く伝統芸能を380年続く温泉宿で体験していただきたいという趣旨で、2015年1月からスタートしたそうです。
一の湯グループでは、「温泉旅行をより安く、より気軽に、より便利に楽しんでいただきたい」というポリシーに基づき、 最少催行定員を10名以上とすることで、従来の宿泊料金に1名あたり5,000円(税別)の追加でこのプランの利用を実現。しかも夕食は飲み放題付きなのです。
「芸者芸能体験プラン」の流れは、まずは夕食を宴会場でいただきます。会場には湯種のほか、4組のグルーブがいらっしゃって、外国人の方がほとんどです。芸者さんたちの登場を待ちながら、一の湯の創作料理を味わうのは格別。
・名物 一の湯豆冨
・三崎まぐろとアボガドのレモン風味
・かさごのから揚げ 美味おろし添え
・海鮮せいろ蒸し
・箱根山麓豚の味噌すき焼き
・ご飯・香の物・お吸い物
・水菓子(取材当日は洋梨のシャーベット)
一の湯オリジナルのお豆冨にはオクラが添えられ、とてもクリーミー。魚介類を使った料理も趣向が凝らされ、濃厚な味わいの「三崎まぐろとアボガドのレモン風味」や揚げたての「かさごの唐揚げ」は大根おろしと糸唐辛子添えで美味しかったです。
せいろで蒸された魚介類と野菜は2つのソース(ポン酢とバーニャカウダソース)で楽しめます。
メインのお鍋は箱根山麓豚を用いた味噌すき焼き。ネギやニラ、ナメコなどの野菜が煮えたところで箱根山麓豚を投入し、チーズを入れて仕上げます。旨みのある豚肉はやわらかく、甘辛い味噌ダレとチーズのコクがご飯にぴったり。
冬はしゃぶしゃぶ等の鍋が楽しめるとのこと。この箱根山麓豚ならしゃぶしゃぶも期待できますね!
いよいよ芸者さんが登場!
食事を楽しんでいると、一の湯本館のスタッフの方が壇上に立ち、芸者芸能体験について説明がありました。まずは日本語で、そのあとは英語での解説です。
現在、箱根にいらっしゃる芸者さんは約150名。旅館での宴席を中心に活躍されているそうです。
芸者さんには「立ち方(たちかた)」と「地方(じかた)」がいらっしゃって、舞踊を主にするのが「立ち方」、三味線や笛などの鳴り物の演奏を担当するのが「地方」と呼ばれています。「地方」となるにはかなりの修練が必要で、現在、箱根には4人しかいらっしゃらないそうです。
お座敷の始まりは地方さんによる長唄から。初夏を迎えた隅田川沿いの本所・両国の情緒と情景を描いた「岸の柳」を三味線の演奏と共に聞かせてくれます。
次の演目は端唄(はうた)「潮来出船(いたこでふね)」。2人の立ち方さんが登場して、しとやかに舞います。あやめの花や水路の船を漕ぐ様子をわかりやすく表現。
次の演目は端唄「奴さん」で若い男女の表現方法を楽しんでいただく曲。男性の舞は凛々しく、女性の舞は艶やかで見応えがありました。
また、地方さんの横笛に合わせ、即興の舞踊も。演目が進むにつれ、舞台に目が釘付けになります。湯種はこうした本格的なお座敷で芸者さんを見るのは初めて。その美しさと芸術性の高さに思わず、みとれてしまいました。
唄と舞踊が終わり、次はお座敷遊び。まずは有名な「金比羅船船(こんぴらふねふね)」です。お姐さん(芸者を親しく呼ぶ時の呼称)がお手本を見せてくれました。
お姐さんとお客さんが机を挟んで向かい合わせに座り、曲に合わせて机の上の「はかま(徳利の受け皿)」に交互に手をのせ、「はかま」があるときはパーを出し、「はかま」がない時はグーを出します。間違えたほうが負け。参加された外国人の方も楽しそうです。湯種もチャレンジしましたが、楽しすぎて心臓がバクバク。
続いては「おひらきさん」。このお座敷遊びは向かい合わせに立ち、ジャンケンをして負けたほうは足を徐々に開いて行きます。先に倒れたほうが負け。湯友の湯達入郎(ゆったりはいろう)氏が絶好調で、この楽しそうな笑顔をご覧ください!
芸者芸能に詳しい湯達入郎氏は場慣れしている様子。見ているだけでも心が華やかになるというか、楽しいのです。湯達氏が頻繁にお座敷に通っている理由がわかるような気がしました。
楽しい時間も終わりが近付いてきました。フィナーレは「東京音頭」。
これはお姐さんに教わりながら、一緒に踊るというもの。最初は座ったままお姐さんの振りに合わせて踊っていた湯種でしたが…。
こらえきれずに、とうとう立ち上がって踊ることに。しかし、外国人の方に先を越されてしまいました。
続いてたくさんの人が踊りの輪に加わり、宴の盛り上がりはピークに達します。みんなで踊るのは楽しい!
また、お座敷遊びや踊りに参加した人には、宿から雅な柄のハンカチがプレゼントされます。これは良い記念になりますね。
名残惜しくも宴が終了しても、一の湯の芸者芸能体験プランではお楽しみが終わりません。なんと、お姐さんたちとの歓談タイムが設けられているのです。これは外国人の方はもちろん、日本人にもうれしいサービス。湯種もしっかりお話ししましたよ〜。
しかもお話しができるだけでなく、記念撮影もできるのです。これには湯達入郎氏も大喜び。「今日、ここに来たかいがあった…」と地方さんから三味線をお借りしてしっかりポーズを決めていました。お姐さんたちも素敵ですね。
お姐さんたちと踊りや遊びで約2時間楽しいひとときを過ごし、東京音頭を踊ったことで心地よい脱力感が。あとは温泉に入って寝るだけですから、極楽です。いつもと違う旅館での過ごし方でしたが、とても気に入りました。
こうした日本の文化を外国人の方だけではなく、1人でも多くの方に体験していただきたいと思った湯種でした。
朝食はレトロな「レストラン 神山」で
「レストラン 神山」は大正時代に造られた大広間を改装した食堂で、もともとは畳敷きだったそうです。広々とした空間は重厚ながらも、清々しい雰囲気。
至るところに当時の職人の技が感じられます。
ゆったりとした時間が流れる空間の中、さわやかな気持ちでいただいた朝食は純和風。アジの開き、温泉卵、湯葉と椎茸の煮物、納豆、ゴボウサラダ、さつま揚げ、昆布、梅干し、のり(一の湯オリジナル)と、これぞ日本旅館の朝食です。
鍋仕立ての味噌汁は鶏のつみれが入った甘めの味。アツアツを食べられるのが良いですね。