箱根 天山湯治郷 ひがな湯治 天山
こだわりの源泉浴で日帰り湯治を満喫
人気の「天山」の野天風呂を徹底レポート!
念願の「奥の湯」にも入りました
少し時間ができて「箱根の温泉に行きたい」と思った時に、真っ先に目に浮かぶのが箱根湯本の天山湯治郷です。奥湯本の自然に抱かれた8000坪の敷地の中に日帰り温泉施設「ひがな湯治 天山(てんざん)」「かよい湯治 一休(いっきゅう)」、宿泊施設「逗留湯治 羽衣(はごろも)」などがあります。
私、井伊湯種(いいゆだね)はもう何度も通っており、深山の湯治場のような雰囲気や湯遣いの良さで温泉ソムリエをはじめとする、温泉好きを魅了する天山湯治郷。ようやく念願が叶い、「天山」を取材することができました。(いつもは館内の撮影は禁止です。)
「天山」は箱根を代表する人気の日帰り温泉施設。券売機でチケットを購入して、階段を登ったところに入口があります。
風情ある石畳の小径の先に「天山」の玄関があります。
下駄箱に靴を預け、フロントで受付を済ませて館内へ。野天風呂へは廊下を進み階段を下ります。
階段を下りると、休憩所を兼ねた空間が。ここから中庭に出ることができます。また、お風呂屋の番台のようなスペースもあり、浴衣をレンタルできます(有料)。
天山湯治郷にはこれまで6本の自家源泉がありました。総湧出量は毎分258ℓでしたが、2016年8月には開湯50周年の記念事業として7本目の源泉が新たに加わり、総湯量は毎分336ℓ(日量では約500t)になりました。この源泉を他へは配湯せずに天山温泉郷一カ所で使用しており、箱根でも屈指の湯量を誇っています。
「天山」の男湯には五湯(内湯、外湯、窯風呂/サウナ)があります。屋根があるところが内湯のようですが、どこにいても風を感じられる開放的な野天風呂という趣きです。
湧き出たばかりの源泉が直接湯船に注がれ、上質な源泉かけ流しを楽しめるのが「天山」の特色。源泉の温度は真冬の早朝でも50℃を超す高温なのですが、泉質の同じ源泉ごとに熱交換システムを使い、水を一滴も加えず空気にもふれさせず源泉100%の純度を保ったまま適温にしています。
また、塩素殺菌剤を使わず銀イオンで殺菌しているので、肌あたりはすごくやわらかです。
いつもながら「天山」の温泉へのこだわりには感動します。こうした勢いのある源泉のかけ流しを楽しめるのはとても贅沢なこと。お湯の鮮度が良いですから、本格的な1日湯治にはもってこいですね。
「天山」では、アルカリ性のナトリウム・塩化物泉とアルカリ性単純温泉という2つの泉質を楽しむことができます。泉質や湯船に合わせて、最も心地よく入れるように湯温を37℃〜44.8℃の間で細やかに設定。
たとえば、山肌近くにある岩風呂はアルカリ性単純温泉です。天山の中でも最も古い源泉を使用しており、やわらかなとろりとしたお湯で肌がつるつるになる美肌の湯。湯温は41.8℃に設定しています。
あがり湯(漆風呂)の泉質は、ナトリウム-塩化物泉。あがり湯のため、高めの温度43.8℃に設定してあります。最後に入るのがオススメだそうで、パワフルで目の覚めるようなインパクトがあります。
漆風呂の脇には小さな湯船があり、入ってみると湯種好みの不感温度37℃のぬる湯。あつ湯とぬる湯を行ったり来たりできる極楽です。
内湯のスペースに大きな甕(かめ)に入った塩が置かれています(男湯のみ)。この塩を窯風呂(温泉蒸気の湿式サウナ)に持ち込んで使用する人が多いらしいのですが、本来は持ち込み禁止なのだとか。
窯風呂(温泉蒸気の湿式サウナ)へ入る前に外で立ったまま全身に塩を擦り込むことで発汗をうながし、血行を良くし、肌を引き締める効果のある昔ながらの健康法です。
また、浴室と脱衣所の間に全身ドライヤーが設置されています(男湯のみ)。ここに立つと、ブォーッと風が出て来て身体を乾かしてくれます。せっかくの温泉を、なるべくタオルで拭かずに上がるための秘密兵器。汗もひくので湯種のお気に入りです。これはとても快適なので、ぜひ利用してください。
また、天山では「飲泉」もできます。
天山では開湯当時からミネラルを豊富に含んだ源泉でご飯を炊いたり、しゃぶしゃぶの湯に利用してきたそうです。特に天山の源泉の中でも湯本74号泉(アルカリ性単純温泉)はpH9.3とアルカリ度が高く、しかも硬度の低い軟水のため、飲みやすいのが特色。のどごしが良く、まろやかです。胸焼けや二日酔いなどに効果があるそうです。もちろん飲泉許可も取得済みですので、ぜひ試してみてください。売店の横に飲料スペースがあります。
女湯には「天山発祥の湯」や洞窟風呂があります
続いて「天山」の女湯をご紹介しましょう。
女湯には六湯(内湯、外湯、サウナ)あり、男湯と同様に奥湯本の自然と一体となれる開放的な造りですが、趣きが異なります。
露天エリアの中央に屋根付きの休憩所を設けています。
女湯もお湯の温度にこだわり、それぞれの湯船で温度設定をしています。そのため、自分好みのお湯が見つかると思います。
「子宝洞」と呼ばれる「洞之湯(ほらのゆ)」は、ナトリウム-塩化物泉を用いた温まりの湯。子宝の湯として人気です。洞窟の奥は湯気がこもり、ミストサウナ状態に。湯坂山の懐に抱かれながら、静かに瞑想もおすすめだそうです。
「祖之湯(もとのゆ)は天山で一番古いお風呂で、天山発祥の湯と言われています。昭和30年に築かれ、使われている石はもともとも川原の石だったそうです。源泉に洗われ、味のある光沢が年月を感じさせます。
このお風呂の泉質はアルカリ性単純温泉。7本ある源泉のうち1本がこのお風呂の直下にあり、鮮度も抜群。肌触りの良いとろみのあるお湯で「女湯の中でここが一番お肌がツルツルになる」と評判です。「祖之湯(もとのゆ)」をよく見ると、小さな観音様やお地蔵様が置かれていて、ありがたい存在に見守られている雰囲気です。
「祖之湯(もとのゆ)」の上に位置する東屋風のお風呂の泉質もアルカリ性単純温泉。人目を避けてゆっくり湯治気分を味わえそうです。
こちらは女湯の洗い場です。木の温もりのする古民家風で素敵ですね。正面はかけ湯の浴槽です。
洗い場には無添加シャンプー、リンスの備え付けがあります。また、石けんは昔ながらの無添加の固形石けんを用意。これは自然保護の観点から自然に還元される素材を選んだのだそうです。
脱衣所は東京・神田の古い商家を移築した、落ち着ける雰囲気の空間です。
脱衣所から階段を登ったところにパウダールームがあります。
こちらは女湯の脱衣所の2階に設けられたお休み処です。湯上がり後、畳に横になるのも良いですし、大きなクッションを利用してくつろぐのも良いでしょう。
湯上がり後は大広間「ざしきぼっこ」へ
中庭の離れに大広間「ざしきぼっこ」があります。須雲川に面しており、絶景が広がります。
奥には読書室「雨宿り」もあり、本を片手にゆったりした時間を過ごすことも。湯種は天山で発行している瓦版を読みながら、ゆったりとくつろぎました。
また、野天風呂への階段手前の右と左に、気軽に休憩できるお座敷「まちあいとこしかけ」があります。
ひっそりと佇む「奥の湯」
プライベートな空間で休みたいという人には貸座敷「離れ雲」(有料)がおすすめ。全7室の個室座敷があり、2時間3,900円(税込)で4人まで利用できます。また、貸座敷利用者は「奥の湯」に入れます。ただし、男女別で家族等での貸切はできません。
「奥の湯」は初めての体験です。メディアにもあまり露出していないお風呂のため、期待で胸が高鳴る湯種でした。
「奥の湯」は男女別になっていて、それぞれ露天風呂が一つあります。
こちらは竹林の眺めが美しい男湯の露天風呂。脱衣所一体型のお風呂になっており、洗い場はありません。風情のある脱衣所に腰をかけて、しばらく目の前の景色を眺めていたくなります。
岩風呂に入ってみれば、奥湯本の自然が迫り、まさに源泉浴と森林浴を同時に楽しめるロケーション。ジワジワと新鮮な源泉に包まれながら、心身が緩んでいきます。この気持ちよさは素晴らしい体験でした。
食事処は2カ所、平日は「一休」にも入れるはしご湯券を用意
お腹が空いた時は、館内の「楽天」または「山法師」へ。2階の「楽天」では温泉しゃぶしゃぶをはじめ、山のにぎりやます寿司などを楽しむことができます。1階の「山法師」は天山の食卓。むぎとろやスッポン、うなぎなどを使った滋養料理を用意しています。
源泉かけ流しをたっぷり楽しみ、1日湯治を満喫できる「天山」。ゆっくりしたい方は平日が狙い目です。平日ですと、お隣の「一休」にも入場できるはしご湯券300円もおすすめですよ〜。時間のあるときにそちらへも訪れてみてください。
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