大観荘 熱海温泉
横山大観に愛された宿
建物も庭も、飾ってある絵画も。本物に包まれて過ごす安らぎの時間を楽しめる宿です
広い庭園と本物の数寄屋造りの建物が魅力の大観荘。四季折々の庭の風情を楽しみながら、ゆったりとくつろいで過ごすことができるお宿です。熱海に別荘があった日本画の巨匠、横山大観もこの宿を気に入り、よく宿泊したそうです。今回は、井伊湯種(いいゆだね)の温泉の師匠、温泉紀行ライターの飯出敏夫(いいでとしお)さんと一緒に、この歴史ある宿を訪ねました。
大観荘はもともと中山製鋼所創業者の中山悦治翁の別荘として昭和15年に建てられたもので、建築は数寄屋造りの第一人者である平田雅哉氏に依頼しました。森繁久弥が主演の映画「大工一代」のモデルにもなったほど、平田氏の細部にまでこだわった建築は素晴らしく、昭和23年に旅館としての営業を開始してからも、増築や改築は平田氏に依頼したそうです。
また、当初中山氏の手により作庭が進められていた庭園は、彼が造園研究家の龍居松之助氏と知り合ったことで中止されました。龍居氏の才を見込んだ中山氏は、完成間近の庭園を壊してまで龍居氏の手に庭園づくりを委ねることを決めたからでした。
そんな逸話のある大観荘の広大な敷地の中で、私たちが心からくつろげるのは、匠たちの技と情熱が創り上げたものの価値が今なお生き続けているからかもしれません。
中山翁は、美術品の収集家としても知られていました。ただ、当時の美術商の中には、信頼できない人たちも多く、翁は作家たちから直接購入する方針を貫いていました。その結果、横山大観と知り合い親しくなる中で、大観は大いにこの別荘を気に入り、たびたび訪れるようになったそうです。
中山翁は旅館として開業するにあたり、横山大観に願い出て「大観荘」という名前にすることを快く承諾されたということです。
今もなお、大観荘には横山大観の直筆の絵が飾られています。また、大観が宿泊していた部屋は、「大観の間」として当時の名残を留めています。
高台の絶景と四季折々の風情を楽しめる美しい庭。客室から浴場への移動の時間も楽しく過ごせます。
趣の違う3つの大浴場
入れ替え制だから全ての温泉を楽しめます!
大観荘では、敷地内に源泉を2本所有しています。大浴場は「山王の湯」と「滝の湯・ひのきの湯」が時間制で入れ替えになります。湯種と飯出さんはまず滝の湯へ。
※大浴場の利用時間は、14:00~24:00 翌 4:00~10:00
滝の湯は内湯と露天風呂に分かれています。
次に入ったのは山王の湯。ここも内湯と露天風呂があります。開放的な露天風呂からは熱海の海も見え、とにかく景色が最高でした。太陽の陽を浴びながら、絶景を眺め、温泉を楽しむ…。温泉好きにはたまらないひと時です。
もう一つの大浴場はひのきの湯。その名のとおりひのきの香りと木の温もりを楽しめる温泉です。
大観荘には貸切露天風呂が3つもあります。いずれも、熱海の海と街を見下ろせる抜群の眺望を楽しめます。
4つのブースに仕切られた足湯からも、海が見える眺望を楽しめます。
オリジナリティあふれる客室
大観荘の客室は全部で57室。数寄屋造りの特色なのか、創業の頃から部屋は全て違う造りになっていました。その伝統が受け継がれ、今でも一つとして同じ造りの部屋はありません。
個性的なお部屋ばかりですが、共通することとして、お花や絵などの室内のしつらえが丁寧になされていました。また、畳も本畳であり、一層のこだわりを感じました。ただ、ベッドのお部屋だけは今風の快適なお部屋に仕上げているそうです。
また、このお宿は若い客室係の方も本当に洗練された感じの良い接客をしてくれました。創業来受け継がれてきた接客の心得は、「自分の恩師をもてなすように」ということだそうです。折り目正しい応対の中にも親しみを感じるのは、その精神が浸透しているからなのだと感じました。
最上階5階にあるデラックス和洋室は素晴らしい眺めの客室です。部屋の外にはウッドデッキがあり、しかも、開放感のある内湯では海を眺めながら入浴ができます。
創業当時から受け継がれる京風懐石料理が楽しめます!
創業者の中山翁は本物の京懐石を提供するために、京都から職人を連れてきたそうです。伊勢海老、鮑、松茸、蟹など旬の食材を楽しめるメニューなのも嬉しいですね。味はもちろんのこと、目でも楽しめる料理だと感じました。
寿司処「花吹雪」と鉄板焼「松嘉庵」も大人気!
大観荘の敷地内には、宿泊客以外も利用できる寿司処「花吹雪」と鉄板焼「松嘉庵」があります。地元でも美味しいと評判が高く、熱海に別荘をお持ちのお客さまがよく利用されるということです。また、来店したお客さまは旅館内の大浴場を利用できるというサービスも、とても好評だそうです。
寿司処「花吹雪」のこだわりは、「生きている魚だけを使う」こと。料理長自ら専用船に乗って釣りに行くそうで、店内に水槽があるのはもちろん、港にも水槽があって生きたままの魚を常に確保しているとのこと。
だから、ネタは新鮮そのもの。寿司職人の技と新鮮さで不動の人気店になっています。
鉄板焼「松嘉庵」はシェフのこだわりで、厳選した黒毛和牛のA4ランクの肉をフィレ・サーロインに使用しています。地元産の新鮮な海の幸・山の幸も楽しめます。その美味しさで地元の人々にも愛されている人気のお店です。昼10名、夜10名の限定かつ予約制です。
高台にある絶景を楽しめるお宿です!
大観荘は広すぎて迷子になりそうなお宿。斜面に建っているため、建物や温泉を巡っていくのも楽しみの一つです。お風呂や庭からの景色はまさに絶景。露天風呂で風にあたりながら、海や景色を眺めるのはとても気持ちがいいです。庭や温泉をのんびり楽しめるため、ほとんどの宿泊客があまり敷地から出ないというのもうなずけます。
ゆったり、のんびりくつろいで、贅沢な時間を過ごすのに最適なお宿だと感じました。
より大きな地図で 温泉グルメ探訪 を表示