熱海温泉 山田湯
民家の一角にある、源泉かけ流しの共同浴場
温泉マニアも訪れる、貴重な地元湯
私、井伊湯種は地元にある共同浴場が大好きです。湯遣いの良いところが多く、古くから地元の人に愛されてきた温もりが感じられるからです。また、小規模な湯船でシンプルに温泉を楽しめることも気に入っています。
熱海市にある共同浴場「山田湯」もその一つ。JR熱海駅より1.9kmほど離れた静かな住宅街にありますが、遠方から温泉マニアも訪れます。
ここは、ナビに従うと畑の中を進むことになります。クルマ、徒歩いずれの場合も下記のルートで行ってください。
熱海駅からは温泉街を伊東方面に進み、「熱海金城館」の先を右折。黒っぽいモダンな建物を目印に右手の細い路地に入ります。右手に空き地(駐車場)が見えると、その先に「山田湯」があります。
看板はなく、入口に「男湯」「女湯」とあるだけで、ひっそりとした佇まい。戸を開けると懐かしい感じの番台があります。不在時は、隣にオーナーの山田さんの家がありますから、声をかけてみてください。
「山田湯」は昭和30年頃に開業した民間の共同浴場。かつては混浴でしたが、昭和37年に男女別の浴場にしたそうです。料金は大人一人300円。洗髪するとプラス50円かかりますが、もともと昔の銭湯は別料金でした。洗髪をするとお湯をたくさん使うためです。
味のある暖簾をくぐると、脱衣所は棚だけの昔ながらのシンプルさ。お風呂は内湯のみです。
レトロなタイル貼りの浴室で、湯船は3人サイズ。水車と富士山を描いたタイル画を眺めながら、源泉かけ流しの熱海温泉を楽しめます。
温泉は熱海の共同源泉(混合泉)より引き湯をしていて、源泉温度が56.2℃のため、適温にするために浴槽の中で加水し、開店時には42℃位にしているそうです。夏場はもう少し温めにするのだとか。「あとの湯加減はお客さま次第です」と「山田湯」の女将さん。このおおらかさというか、良い意味でゆるいところが良いですね。
お湯は無色透明で味は甘じょっぱい感じ。泉質はカルシウム・ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉です。お湯にはキシキシ感があり、湯上がりはベタ付き感がなく、サッパリ。「汗がたくさん出るから良いというお客さまもいます。リウマチも良くなったという方もいらっしゃいますね」と女将さん。
そうなんです。熱海の温泉(塩化物泉)は、たいがい汗が止まらないのです。こちらはお湯の鮮度が良いのか、特にその傾向を強く感じました。入浴後、いつまでも汗が吹き出てくるので、思わず再度入浴して汗を流した湯種でした。
もともとは湯屋の裏手にある自家源泉を利用していたそうですが、10年前より熱海の共同源泉から引き湯をしているとのこと。自家源泉は塩分が強く、濃厚でガツンとくるようなお湯だったそうです。
最後にお風呂の裏手にある自家源泉の場所を案内していただきました。こうした源泉場所を見学できるのは、楽しいものです。10年前から使用していない温泉タンクには蔦がからまっていました。
かつて利用していた自家源泉のお湯にも入ってみたかったと強く思う湯種でした。しかし、熱海でも利用者減少により、こうした共同浴場は少なくなってきていますので、温泉マニアとしては存在自体が貴重で、こうしてお風呂に入れることがうれしく思います。
取材中にも地元の常連の方がやってきて、女将さんと園芸談義をしていました。辺りを見渡せば、小さな庭に季節の花が咲いていて、気分が和みます。
また、共同浴場の手前に入浴者が無料で利用できる駐車場が2台分あります。ただし、道幅が少し狭いので大型車での来訪は避けたほうがいいでしょう。
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