熱海温泉 竜宮閣(龍宮閣)
レトロな温泉や古い建物が好きな人に訪れてほしい!
温泉マニアが通う、源泉かけ流しの鄙び湯
創業は昭和13年頃、古い時代の熱海が感じられる竜宮閣(龍宮閣)。私、井伊湯種が大好きな昭和の香りのする湯宿です。もともとは蕎麦屋だった建物をご主人のお祖父さまとお祖母さまが買い取り、宿を開業したそうです。
こちらは温泉マニアの間で有名な宿で、客室数は全部で5つ。お風呂が2つあり、貸切風呂として利用できます。宿泊者がお風呂に入っていなければ、夜22時までは日帰り温泉も可能です。たとえば朝の10時以降など、宿泊者がチェックアウト後の時間を狙って行けば、入りやすいかもしれません。ただし、毎月第三水曜日はお風呂が使えないため、要注意です。
さて、2つのお風呂をレポートします!
お風呂はどちらも家族風呂という趣きで、こじんまりしています。
大きめのお風呂は3〜4人ぐらい入れる大きさです。タイル貼りで、昭和初期に作られたレトロな感じが良いですね。印象的な竜宮城や水浴びをする女性のタイル画も当時のものだそうです。タイル画にサインがありますが、ご主人にお聞きしたところ、「詳細はわからない」とのこと。魚を持つ子供のオブジェもいい味を出しています。
こちらはうれしいことに100%源泉かけ流し。泉質はカルシウム・ナトリウム−塩化物温泉。源泉は76.7℃と熱いですが、加水をせずにお湯を出す量を調整しながら適温にしているそうです。
この湯船には源泉と水の蛇口があり、お湯が熱い時は好みの温度にすることができます。
ご主人によれば「長湯をしたくても30分も入っていられないだろう」とのこと。まさにそのとおり。熱海の温泉ならではの塩分の強いお湯で、汗が止まりません。
源泉は宿から歩いてすぐの平和通り商店街にあり、熱海93号線・福々温泉という名前です。かつては30件ぐらいの宿の共同源泉でしたが、廃業等で現在、商業用に利用しているのはこちらの宿だけとのこと。レトロな雰囲気や湯遣いの良さもありますが、遠くから温泉マニアが通って来るというのもわかりますね。
また、小さいお風呂は1〜2人用。こちらは鯉と富士山と水辺の風景を描いたタイル画があります。こちらのオブジェは女性と亀。この浴槽は源泉蛇口のみのため、水を入れて湯加減を調整することができません。つまり、源泉そのものを楽しめるのです。「ゆっくり入れるから」と、この湯船にだけ入りに来る常連の方もいらっしゃるそうです。
お風呂上がりは、館内を案内していただきました。いたるところに職人さんの細工や遊び心が見受けられます。
館内にご主人のご家族の写真が飾られています。小説家の堀辰雄の遠縁にあたるそうで、本人筆の色紙もありました。
戦時中は学童疎開のために宿を開放していたそうです。「大森(東京)の小学校の生徒がこの宿を利用していました。住むところは何とか提供できたのだけれど、当時は食べ物がなくてね…」とご主人。
『静岡県の戦争遺跡を歩く』(静岡新聞社刊)に当時のことが掲載されていますので、興味のある方はぜひ読んでみてください。
客室はすべて2階にあり、案内していただいた部屋は天井に檜を用いた、素朴な雰囲気の和室。西郷隆盛が書いたと言われている書やユーモラスなタヌキや獣の置き物が飾られています。
奥に階段があり、その先はなんと見晴台ともいえるスペースが。かつてはここから海が一望できたそうですが、今は高いビルに遮られ、一部しか見ることができません。熱海の花火大会も見ることができたといいますから、その頃訪れてみたかった…と思った湯種でした。
「常連さんからはあと10年は頑張ってほしいと言われています。小さなお子さまがおじいちゃんを連れてくることもあるんですよ。『シブイ』とか言ってくれてね。古いものが好きな方に来ていただき、温泉を楽しんでいただきたいですね。」とご主人。
湯遣いは抜群ですので、ぜひ未湯の方は訪れてみてください。
宿を出てからは源泉の場所を訪ねることに。宿から歩いてすぐの熱海駅前のアーケード街(平和通り商店街)を目指します。イカが干してあったり、猫が昼寝していたりと、のんびりとした路地を通り抜けると、観光地ならではの賑やかな通りに「福々の湯」の手湯スポットがありました。傍らには夢掛け地蔵さんがニッコリ微笑んでいます。
すぐ脇には金色夜叉などの顔出し看板もありますから、記念撮影もおすすめですよ〜。
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