長岡の元湯 実篤の宿 いづみ荘 伊豆長岡温泉
武者小路実篤ゆかりの宿で
長岡温泉「一号の湯」に大興奮!
開業当時の宿名は共栄館、100年以上の歴史を持つ湯宿
久々に伊豆長岡温泉を訪ねました。伊豆長岡温泉は井伊湯種(いいゆだね)が若い頃からたびたび訪れている愛着のある温泉街です。伊豆長岡温泉は源氏山を挟んで東側の古奈地区、西側の長岡地区に分かれます。
伊豆長岡温泉はおよそ1300年もの歴史を持つ「古奈温泉(こなおんせん)」と明治時代に開湯した「長岡温泉」が併合して、現在の温泉街になりました。
その中でも長岡地区にある「いづみ荘」は明治40年(1907年)の長岡温泉の開湯に伴い、開業した老舗旅館。長岡温泉とともに100年以上の歴史を持っています。
建物は歴史が感じられるレトロな佇まい。開放的なロビーやラウンジもクラシカルな雰囲気でどこか懐かしさが感じられます。湯種はずいぶん前にいづみ荘に泊まったことがありますが、温泉マニアになる前でしたから、もう25年位前になるでしょうか。
今回案内してくださったのはふんわりとした優しい笑顔が印象的な女将さん。かつてスルガ銀行に勤めていたことがあるそうで、親近感を覚えた湯種でした(※井伊湯種は実在するスルガ銀行の社員です)。
最初にお話しを伺ったのは宿のキャッチフレーズになっている「長岡の元湯 実篤の宿」について。
いづみ荘の初代、渡辺安左衛門氏が自分の田畑から湧き出す温泉を発掘し、これが長岡温泉の元湯「一号の湯」となったそうです。
もともとは「共栄館(きょうえいかん)」という名前でしたが、昭和30年(1955年)頃、伊東温泉のいづみ荘との縁組みにより「いづみ荘」という宿名に改名しました。
また、いづみ荘は大正時代から昭和にかけて活躍した文豪、武者小路実篤ゆかりの宿でもあります。
それは昭和元年に、実篤が持病の神経痛が悪化した際に知人にすすめられて訪れたのが長岡温泉のいづみ荘(当時は共栄館)でした。敷地から湧き出す自家源泉「一号の湯」は実篤の神経痛によく効いたそうで、それ以来20年にわたり、いづみ荘を訪れるようになり、1年の半分をこちらで過ごしたそうです。
館内には武者小路実篤記念文学館が併設されていますので、ファンの方は要チェックですね。
敷地内で豊富に湧き出す「一号の湯」
いづみ荘にはそれぞれ趣の異なる内風呂と露天風呂がある大浴場が2つと、貸切風呂が3つあります。
伊豆長岡温泉は源泉の維持管理を目的に温泉集中管理方式を早い時期から採用しており、長岡・古奈地区の源泉は一旦集められ、そこから各旅館や施設に供給されています。しかし、いづみ荘では敷地内の自家源泉「一号の湯」を使用していると聞いて湯種、大興奮!
長岡温泉の元湯「一号の湯」は100年以上の歴史があります。
長岡温泉について書かれた町史によれば、明治40年頃、山あいの田んぼに温泉が出て大騒ぎとなったようです。田の中に竹の筒を挿入したら、もくもくと温泉が吹き出て、周辺には湯気が立ち込めて不思議な光景だったとか。いづみ荘の源泉については明治40年よりも前に湧出しており、かつては有城温泉と呼ばれていたようです。
いづみ荘の大浴場入口には「一号の湯の由来」を掲げており、初代、渡辺安左衛門氏が所有する田畑の水がだんだんと湯に変わり、温泉が噴出。「いい湯だ、いい湯だ」と評判になり、共栄館という旅館を長岡で初めて設立したとのことです。湯種はこうした開湯にまつわるエピソードも大好きで、当時のことを想像するとワクワクしてしまいました。
長湯がしたくなる、趣の異なる2つの大浴場
趣の異なる2つの大浴場は男女入替え制で21時に入替えになります。
まず湯種が向かったのは銘石岩風呂(内湯)と総檜造り野天風呂のある大浴場。
心地よい風が通り抜ける「総檜造り野天風呂」はその名のとおり、野趣あふれる露天風呂です。目の前に見える桜の老木が圧倒的な存在感を放ち、その後ろの竹林が涼しげな雰囲気を醸し出しています。
並々と源泉が注がれた湯船に体をすっぽり沈めます。泉質はアルカリ性単純温泉ですが、肌に少しヌル付きを感じます。お湯はサラリとしていて肌にやさしく、伊豆長岡温泉を利用しているほかの施設と比べて濃厚というのか、ヌル付きの度合いを強く感じました。
お湯に浸かっていると体がジワジワほぐれていく感覚があり、長湯がしたくなります。この一号の湯がこうして武者小路実篤の持病の神経痛を癒したのでしょうか。実篤はいづみ荘のお風呂が大好きで、縁に手をかけてゆっくり浸かっていたそうです。長岡温泉の歴史とともにじっくり味わいたいお湯です。
内湯は厳かな雰囲気の銘石岩風呂。日本各地から集められた銘石の間を滝が流れる造りになっています。
ひっそりと一号の湯が祀られていて、静粛さが感じられました。
内風呂と露天風呂で全く雰囲気が異なり、ゆっくり過ごしたくなる大浴場だと思いました。
もう一方の大浴場は檜風呂(内湯)と庭園風野天風呂が楽しめます。
大浴場ののれんには実篤の書画が使われていました。
内湯の檜風呂は檜の香りを楽しみながら、湯浴みができます。木造りの浴室はとても落ち着ける雰囲気。和やかな気分で長湯ができそうです。
庭園風野天風呂は中央に置かれた大きな石が印象的。石には実篤の言葉が刻まれており、湯船に記念碑が配置されているお風呂は珍しいと思いました。
石の裏にも言葉が刻まれていました。このお湯に実篤も浸かっていたのだと思うと感慨深いものがあります。
脱衣所は棚に脱衣籠が置かれ、オーソドックスな雰囲気。壁にはロケで使われたドラマの写真が飾られていました。
キーなどの貴重品を保管できる木造りのロッカーがレトロで素敵です。
無料で利用できる3つの宿泊者専用貸切風呂
凝った造りの2つの大浴場のほか、3つの宿泊者専用の貸切風呂も用意しています。予約制ですが、16:00~24:00内で40分間無料で利用できます。
3つの貸切風呂の中でも湯種のイチオシは洞窟モグラ風呂。小笠原諸島から運ばれてきた軽石で全面を覆っている洞窟風呂です。湯種は洞窟系のお風呂が大好きで、こうした凝った造りのお風呂は入っていて楽しいですね。
また、女性に人気なのが貸切露天風呂「大正ロマン はいから浴場」と「ハーブの湯」。
貸切露天風呂「大正ロマン はいから浴場」はその名のとおり、大正ロマンがモチーフ。ブラウン系のインテリアで統一され、白いソファが置かれた脱衣所は大正時代のレトロ感が漂います。
浴室はレンガや御影石、竹などの木材が使われ、和洋折衷のテイスト。今ではあまり使われなくなってしまった言葉ですが、「はいから気分」を味わえるお風呂です。
貸切露天風呂「ハーブの湯」はさまざまなハーブの香りが楽しめるお風呂。脱衣所にはドライハーブが飾られ、良い香りが鼻腔をくすぐります。
湯上がり後はお肌がスベスベになる美肌の湯。pH値を測定すれば弱アルカリ性のお湯でした。
いづみ荘は日帰り入浴での利用も可能ですが、宿泊して2つの大浴場と3つの貸切風呂を堪能したいと思った湯種でした。湯船の数で言えば「7つの湯巡り」ができるわけですね。それぞれの浴室も個性があり、お風呂好きには楽しい湯宿だと思います。
「和楽」が体感できる空間
「和楽(わらく)」とは、皆が和やかに楽しむこと。いづみ荘の客室は木の温もりがする純和風の空間で、窓から見えるのは樹木や中庭の景色など。和楽が体感できる、とても落ち着いた客室です。
客室は全40室。6畳の客室から離れ、特別室、露天風呂付き客室までさまざまなタイプの客室を用意しています。
下の画像はいづみ荘で人気の「回春楼客室」の一例。案内していただいたのは12畳タイプの客室です。床の間には花と可愛らしいフクロウの小物が置かれ、実篤の書画が飾られていました。ゆったりとしていて、くつろげる雰囲気の和の空間が素敵です。
本間の隣に6畳の和室があります。広々として過ごしやすそうですね。
この広縁から見えるのは河津桜。開花のシーズンは素晴らしい眺めが楽しめるそうです。
「回春楼客室」はバスとウォシュレットトイレ付き。広々とした空間でのんびりできるのはもちろん、快適に過ごせると思います。
今も残る、武者小路実篤が愛用した客室
また、いづみ荘には実篤が滞在した客室が当時のまま保存され、現在でも宿泊することができます。昭和元年に初めていづみ荘(当時は共栄館)を訪れ、それ以来20年もの間、1年の半分を過ごし、執筆をしたり、得意の絵を描いていたといいます。
実篤の代表作であり、菊池寛賞を受賞した「愛と死」を執筆したのもこの客室。部屋いっぱいに本や参考文献を積み上げ、わずかな空間で机に向かっていたそうです。
実篤のファンの方は、この客室で「愛と死」を読み返してみてはいかがでしょうか。そして実篤のお気に入りの温泉を堪能すれば、実篤の息遣いが感じられるような、とっておきの文学の旅になると思います。
館内の「武者小路実篤文学館」をチェック!
いづみ荘の館内に併設された「武者小路実篤文学館」は実篤没後30年を記念して平成18年(2006年)にオープン。
実篤がいづみ荘で執筆した作品や書画、地元の人たちとの交流の様子などが展示されています。「きさくでユーモアにあふれたとてもやさしい方」だったという実篤。実篤の軌跡と人柄などにふれることができる文学館です。
実篤は「愛と死」を昭和14年(1939年)の5月から6月にかけていづみ荘に1か月ほど滞在していた時に書いたそうです。途中主人公が亡くなってしまう場面を執筆した日には「お墓参りがしたい」と言われ、先代が案内したというエピソードも残っています。
展示物を拝見して、とても貴重な作品や資料をコレクションされているという印象を受けました。
いづみ荘ではずいぶん前にテレビ番組で実篤の書画を鑑定してもらったことがあり、その時の鑑定結果は自己評価額の3倍の高値だったとか。こんなエピソードも面白いと思いました、
また、女将さんから「文学館内のソファに座ってコーヒーを飲むこともできるんですよ」と聞いてびっくり。一般的にはこうした展示室では飲食NGですから、コーヒーを飲みながら実篤の世界に浸れるなんて素敵だと思いました。
いづみ荘では宿泊者に朝8時からロビーでモーニングコーヒーの無料サービスがありますので、こちらでコーヒーをいただいて文学館内で楽しむのも良いかもしれません。
湯種もイチオシ!
自分で作る実篤の手描き陶器コーナー
いづみ荘の売店では伊豆土産や自分で絵付けできる陶器などを販売しています。ここで注目したいのはオリジナル陶器が簡単に作成できる「実篤の手描き陶器コーナー」。
つくり方はとても簡単。まずは販売されている無地の陶器から自分の好みの器を決めます。実篤の絵柄シール集からシールを選び、マーカーでサインするだけ。20時までに申し込めば、翌朝焼き上がります。
下の画像は出来上がりのイメージです。
湯種はネコ皿や箸置きに絵付けしてみたいと思いました。
こんな箸置き、お土産にもらったらうれしいですよね。「実篤の手描き陶器コーナー」、イチオシです!
長岡温泉の歴史と武者小路実篤の世界にどっぷり浸れる素敵な宿、いづみ荘。宿泊して7つの湯巡りがおすすめです。
アクセスをチェック!
伊豆長岡駅から車で約5分
いづみ荘の最寄り駅は伊豆箱根鉄道駿豆線「伊豆長岡駅」。電車の場合は、三島駅から20分ほどで到着します。「伊豆長岡駅」より2.4Kmほどの距離がありますが(歩くと30分位)、タクシー利用で約5分。
バス利用の場合は、三津シーパラダイス行きまたは沼津行きで6〜7分。バス停「温泉場上」で下車すると、目の前がいづみ荘です。バスも10分間隔位で走っているようですので、公共機関でのアクセスも意外と便利かもしれません。
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