伊豆畑毛温泉 大仙家(だいせんや)
「ぬる湯」で有名な畑毛温泉の
2種類の源泉を楽しむ
井伊湯種が趣味のクラブの忘年会でいつも宿泊している宿!
200年以上も前から湯治場として利用され、静岡県で初めて環境省指定の国民保養温泉に指定された畑毛温泉(はたけおんせん)。静岡県伊豆の国市および田方郡函南町にまたがる静かな温泉地です。
温泉地の東側には富士山への眺望に優れた大仙山がそびえ、西側には柿沢川が流れ、早春にはかんなみの桜が咲き、素晴らしい眺めを楽しめます。
伊豆の国市奈古谷に位置する大仙家(だいせんや)は、井伊湯種(いいゆだね)がこれまで4回も宿泊している宿。
「ぬる湯」が特色の畑毛温泉には2つの源泉があり、その両方を楽しむことができるのが大仙家です。
宿名から純和風旅館をイメージされる方もいらっしゃるかもしれませんが、館内はモダンな雰囲気。
客室も和室よりも洋室のほうが多く、日本建築の良さを活かしながら館内は洋の空間を取り入れた和洋折衷の造りになっています。
また、誰でも快適に過ごせるように、ほとんどがバリアフリー設計になっています。
緑の眺めが楽しめる落ち着いた雰囲気のカフェも素敵ですね。
ロビーは広く、レトロな雰囲気の応接スペースもあります。
創業は大正時代、女形役の歌舞伎役者の別荘でした
大仙家の歴史を紐解くと大正時代に遡ります。大正デモクラシーの先駆者、吉野作造博士を中心として、畑毛においても総面積約2万坪に及ぶ「理想郷構想」が実施されました。この時、宿泊施設が必要になったため、歌舞伎役者の河合武雄が別荘を兼ねて「榮家旅館」を大正10年に開業。それが大仙家の始まりで、今も庭園に河合武雄の像が残っています。
河合武雄は明治中期から昭和初期にかけて活躍した、新派の女形俳優。館内のギャラリーには写真や資料が展示されていますが、その妖艶さにびっくり。畑毛温泉は若山牧水や与謝野鉄幹、与謝野晶子が訪れた温泉地として知られていて、それぞれ句が残されていますが、歌舞伎役者ゆかりの宿というのも珍しいですね。
畑毛温泉の地名について
最初は何と読むのかわからなかった「畑毛(はたけ)」の地名。「畑」一文字でも「はたけ」と読みますが、先人が田園地帯の中に芦が数本生えているのを見て、人の髪の毛に見えたことから畑の次にわざわざ「毛」と言う文字を追加して「畑毛(はたけ)」と読むようになったと言われているそうです。
下の画像は大仙家の敷地から見えるのどかな田園風景。こんな風景に芦が数本、生えていたのでしょうか。
「自家源泉「大仙湯」と共同源泉「韮山湯」を満喫
それでは、お気に入りの大仙家の大浴場についてレポートします。
男女別の大浴場にはそれぞれ内湯(2種類のぬる湯浴槽と41℃位の主浴槽)と露天風呂、サウナがあり、木造りの円状の天井が印象的です。
ここでは2つの源泉を楽しむことができます。
しかも異なる泉質のぬる湯を一緒に堪能できるので温泉愛好家にはたまりません。
1つ目は大仙家の敷地内から湧出する自家源泉「大仙湯(奈古谷24号)」。ナトリウム-硫酸塩温泉で湯温は約35℃です。肌がスベスベになり、美人の湯と言われています。
2つ目は畑毛温泉の他の旅館や施設でも利用している源泉、「韮山湯(韮山温泉土地第3号泉)」です。泉質はアルカリ性単純温泉で湯温は約30℃。
まずは温度が高いブルーのタイルの大仙湯に入りました。体温に近い不感温度といいますか、熱くとも冷たく感じない温度は体に負担をかけないので、いつまでもじっくり入っていられます。
体が慣れたら、次は約30℃の韮山湯へ。最初は少し冷たく感じるかもしれませんが、しばらくするとジワジワと体が温まる不思議な感覚が味わえると思います。
温度と泉質が異なるぬる湯を楽しめるなんてとても贅沢。どちらも無色透明のお湯ですので、一般の方には2つの源泉の違いがわかりにくいかもしれませんが、湯種はその微妙な違いを探るのが楽しくて、いつも味わうようにして入浴しています。
私のようなぬる湯好きは時間が許す限り長湯をしてしまい、「永遠に出たくない」と思うことがありますが、一般的にはゆっくりと30分から1時間程度の入浴がおすすめです。
低い温度が特長のお湯には、じっくり浸かることで湯冷めをしにくくするほか、高血圧や神経痛改善などの効能があると言われています。実際に大仙家に訪れたときは杖なしでは歩くのが難しかったお客さまが帰りには杖を忘れて帰ったというエピソードもお伺いしました。
脱衣所に防水紙でできた書籍が用意されていますので、お風呂での読書も楽しめます。森鴎外や萩原朔太郎など、長湯しながら文学作品に親しむのも良いですね。
また、ぬる湯浴槽の向かいには約41℃の主浴槽があり、こちらは2つの源泉を混合し加温しています。
2種類の温度の異なるぬる湯とあわせて、自分の好きな温度の温泉を楽しめるのも大仙家の魅力。
露天風呂は伊豆石でつくられた岩風呂。こちらも2つの源泉を混合し加温して利用しています。湯口から注がれる源泉の湯温は約41℃。露天風呂のため、内湯の主浴槽よりは若干湯温が低く感じられました。
高温サウナと水風呂も備えられていますので、サウナ好きな方はうれしいですね。たっぷりと汗をかいてリラックスできそうです
内湯の洗い場は充分な広さを備え、シャンプー・リンスは「馬油」と「TSUBAKI」の2種類が用意されていました。
高い脚の椅子も用意されていますので、膝に痛みがあるなど、足の不自由な方も安心です。
木の温もりがする脱衣所に脱衣籠が用意され、番号付きです。番号が付いていると、自分の籠がわかりやすくて良いですね。また、脱衣所内で利用できる車椅子も備えられています。
脱衣籠の横にはスリッパ入れが設けられていました。スリッパの履き間違いはけっこう不快ですので、これはうれしい心遣いだと思います。
女湯は女性をイメージしたやわらかい雰囲気
女湯は女性をイメージしたという丸い浴槽がやわらかい雰囲気を醸し出しています。
こちらでも「大仙湯」と「韮山湯」を楽しむことができ、主要槽の形や配置は違いますが、お湯の温度は男湯と同様です。手前が主浴槽、左奥のブルーのタイルが大仙湯、右奥が韮山湯の浴槽です。
女性用の露天風呂は初夏にツツジが咲き、美しい眺めを楽しみながら入浴できます。
女湯の脱衣所にはベビーベッドの用意があります。
こちらの脱衣籠には花柄の布がかけてありました。見た目も可愛いですし、さりげないところに宿の細やかさが感じられます。
また、女性には素敵な彩り浴衣も有料で用意しているそうですので、詳しくはフロントへ問い合わせてみてください。
湯上がり後は至福のひとときが過ごせる最高級マッサージチェアもおすすめですよ〜。
館内にはアロマによる顔や全身のトリートメント「アロマ・スパ」や、ボディケアルームも用意しています。ぬる湯を満喫したあとに施術を受ければ、より深いリラクゼーションの効果がありそうですね。アロマ・スパは男性も受けられるので、湯種も一度は体験してみたいと思いました。
「客室は洋室と和室があり、年配の方には洋室が人気
大仙家は全48室の客室のうち、洋室が35室。年配の方の利用も多く、寝起きしやすいベッドが備えられた洋室が人気です。洋室ツインルームの広さは約27㎡。禁煙ルームになっており、室内風呂・ウォシュレットトイレ付きで最大3人まで宿泊できます。
スタンダード和室は10畳の広さ(10畳+踏込)があり、定員は4人。1階の客室は庭に面しています。
今回撮影で案内していただいた客室は偶然にも湯種が泊まったことのあるお部屋でした。広さは10畳+10畳です。とてもくつろげる雰囲気の客室で、室内風呂・ウォシュレットトイレ付きです。
湯種は大仙家には温泉とは別の趣味グループの忘年会でこれまで4回宿泊しています。湯種はその忘年会の幹事を務めており、いつも60人位の大人数で宿泊しています。湯種の大好きなぬる湯が楽しめるのはもちろん、車50台ほどで訪れても収容できるキャパシティがあり、メンバーが客室で心地よく過ごすことができるのもリピートしている理由の一つ。
客室からの風景はのんびりとした田園風景。遠くに沼津アルプスが見えます。
窓の外を見下ろすと、そこは庭園。ちょうどハナミズキの花が咲いていて、その美しさに目を見張りました。
洋室・和室ともに富士山が見える客室もありますので、富士山好きの方は予約の際にお問合せをしてみると良いと思います。
陶芸も楽しめる! 「陶芸工房 大仙窯」を併設
旅の思い出に陶芸体験もおすすめです。大仙家では敷地内に「陶芸工房 大仙窯」を併設。専属のインストラクターが丁寧に教えてくれますので、初めての方も安心です。
手作りコースは1,620円から。箸置きやぐい呑み、湯呑みなどを作ることができます。また、湯呑みや小皿に絵付けするコースもあります。作品は1か月後に宅急便で届けてくれるそうですので、良い記念になりそうですね。
取材時、工房では陶芸体験されている方で賑わっており、猫も遊びに来ていて楽しそうな雰囲気でした。
館内には美しい陶芸作品や絵画を展示するギャラリーもあります。
館内にもさりげなく作品が置かれていて素敵です。
地元の素材を使った鮮やかな会席料理が好評
湯種が大仙家をリピートする理由の一つとして、メンバーに料理がとても好評なことがあります。大仙家では料理に力を入れていて、地産地消を基本に駿河湾・相模湾で獲れた魚介類や沼津・長泉町特産品のあしたか牛などを使用しています。野菜は函南町など地元で採れたものや三島野菜など。これらの新鮮な素材を使った会席料理は彩りも鮮やか。季節ごとに4種類の会席料理が用意されていますので、好みの料理の宿泊プランを選ぶことができます。また、冬は猪を使った牡丹鍋も楽しめますよ〜。
日帰り温泉は昼食付きプランがあります
大仙家では事前予約制で昼食付きの日帰り温泉プランも用意しています。利用時間は11:00〜17:00。宿泊してゆっくり楽しみたいぬる湯ですが、昼食付きで日帰りでも楽しめるのはうれしいですね。昼食は食事処「遊山」にてちらし寿司御膳または大仙蕎麦御膳を用意。食事時間は11:30~13:00。お部屋付きプランもありますので、プチ湯治気分も味わうことができそうです。時間に余裕があったら陶芸体験もおすすめですよ〜。
湯種が大好きな源泉地チェック、
池の水が「温泉」と聞いて大興奮!
これから先はちょっとマニア向けのレポートかもしれません。温泉取材のたびに楽しみにしているのは源泉地の見学です。湯種が今回注目したのは庭園の池。池の中には鯉が泳ぎ、池の周りにはたくさんのクレソンが生育し、初夏には蛍の舞いが見られます。
この池に注がれているのは、お風呂で使用されている大仙湯とは別の自家源泉と聞いて、大興奮。
池に注がれている源泉は池のすぐそばにあり、地下300メートルほどのところから湧き出しています。
泉質等は不明だそうですが、池には蛇口からホースで注がれています。実際にふれてみると、ほどよい冷たさ。湯種は温泉の中でも「野湯」マニアのため、こうしたワイルドな温泉が大好き。このまま「池の中に入りたい」という衝動にかられました。
取材のため理性で抑えましたが、源泉かけ流しの池で泳げる鯉がうらやましい。ここを立ち去るのが名残惜しいような湯種でした。
ちなみに大仙湯の源泉は大仙家の駐車場内にあり、少し地味ですが、このコンクリートの下に湧出しています。
アクセスをチェック
宿の最寄り駅から無料送迎してくれます!
車ですと、東名高速 沼津インターチェンジから 国道1号線・136号線経由で40分位です。インターを降りたら、グルメ街道を南下。この時は左車線が便利のようです。
電車ですと、JR函南(かんなみ)駅または伊豆箱根鉄道 大場(だいば)駅が最寄り駅となり、駅から宿までタクシーでそれぞれ所要時間は10分位です。大仙家では無料送迎を行なっており、事前連絡をすると駅前まで迎えに来てくれるそうです。送迎車は定員9人。函南駅、大場駅の順に巡回し、ホテルに到着します。
大仙家の建物の前では「七転八起 達磨像」も出迎えてくれます。名前は正式には「七転八起 起きた時の立達磨(たちだるま)」といって、かなり昔、宿の工事を行なった際に出土してきたそうです。縁起物の達磨像の足元にはお賽銭もそなえられていました。土の中から現れた立達磨様なんてミステリアスですね。
湯種は今年の忘年会もここを予約しました。穴場的な畑毛温泉・大仙家で思う存分、ぬる湯を楽しんでください。湯治目的での連泊もおすすめです!
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