公共の宿 おおとり荘 伊豆長岡温泉
狩野川の清流を見渡す絶景温泉
土日祝日も同一料金、リーズナブルに宿泊できる湯宿
伊豆半島を南北に貫く狩野川。その西側に位置するのが伊豆長岡温泉です。伊豆長岡駅から徒歩約15分、狩野川近くにある「公共の宿 おおとり荘」を訪ねました。こちらは大人数の家族を連れて定期的に宿泊している友人が強く推薦してくれた湯宿です。
おおとり荘の開業は昭和39年。静岡県に勤める中小企業の従業員がリーズナブルに利用できる「いこいの家」として営業が始まりました。現在はどなたでも利用することができます。
50台は駐車できるという駐車場にはチェックイン前の時間にもかかわらず車がズラリ。それを見た時、「友人の強いおすすめの宿だけに人気があるのかも…」と直感的に思いました。
開放感と清潔感にあふれるフロント・ロビーは温かみがあり、取材日には魚をモチーフにしたユニークな吊るし飾りが展示されていました。
大きな窓に面した明るいラウンジからは日本庭園が見えます。
狩野川や富士山が見える
漆塗りの展望大浴場に感動
おおとり荘には最上階に男女別の大浴場と貸切家族風呂があり、こちらで楽しめるのは伊豆長岡温泉です。かつては街の中央に位置する源氏山の東を古奈温泉、西を長岡温泉と言い、別々の温泉でしたが、統合して伊豆長岡温泉になりました。
大浴場は趣きの異なる「漆塗り展望大浴場」と「伊豆石展望浴場」があり、男女入替制。どちらの浴室からも狩野川の清流を見渡すことができます。
「漆塗り展望大浴場」は富士山と狩野川を眺められる絶好のロケーション。浴室に入ったとたん、目に飛び込んできた素晴らしい景色に感動しました。内湯は窓越しに外の景色が最大限に見えるように設計されており、パノラマ風景のような広々とした景色を眺めることができます。この日は富士山が見えなくて残念でしたが、夏なら早朝、冬は空気が澄んでいるので見えることが多いそうです。
大浴場から狩野川本流と左側に分岐する放水路も見ることができました。狩野川放水路は台風や大雨による水害対策のためにつくられたそうです。
ゆったりとした狩野川の流れや土手の緑など、穏やかな風景に癒されるとともに井伊湯種(いいゆだね)が感動したのは、深紅色に輝く漆塗り湯船です。
漆塗り湯船は樹齢2000年の古代檜に幾重にも丹念に塗り重ねて仕上げたものです。湯船の枠だけでなく全体に漆を塗った湯船を見たのは初めてでした。美術工芸品によく使われる漆は耐久性や薬効があり、血行促進など体にも良い効果をもたらすそうです。漆は古代檜との相性もよく、木目の美しさと艶が引き立て合います。何とも贅沢なお風呂ですね!
勢い良く湯船に注がれる源泉は1300年もの歴史を持つ古奈温泉と明治時代に開湯した長岡温泉の混合泉。源泉の温度は59.9℃。泉質はアルカリ性単純温泉です。無色透明のクセのないお湯は肌にやさしく、美人の湯としても知られています。
古奈温泉は古奈地区に位置する湯谷神社(ゆたにじんじゃ)の鳥居前に自然湧出の源泉があり、そこから湯治場に発展していったと考えられ、源頼朝も立ち寄ったと伝えられる名湯。伊豆三大古湯の一つが古奈温泉で鎌倉時代にはすでに有名な湯治場として栄えていたそうです。長岡温泉は約100年前に田畑から温泉が湧き出て発掘されました。
展望露天風呂は東北地方の一部でしか採取されないという「青森ヒバ材」をふんだんに使用した香りの良いお風呂です。目の前は狩野川。韮山方面の市街地や千歳橋も見えます。伊豆長岡温泉のやわらかなお湯に包まれて心地よい風を感じながらの湯浴みは最高ですね。
また、ゆったりとした空間を確保した脱衣所には鍵付きロッカーを用意。全体的に茶系でまとめられていて、スッキリとした印象でした。
伊豆石を用いた展望大浴場
もうひとつの展望大浴場にはふんだんに伊豆石を用いています。火山灰などの蓄積からできた伊豆石は古くから伊豆の温泉宿のお風呂で使われてきました。高い遠赤外線効果で保温力があると言われています。また、伊豆石は色が美しいことでも定評があり、お湯越しの「あさぎ色」が素敵です。
浴室の床にも伊豆石を使用しています。乾いていると灰色に見えますが、水に濡れると本来の色が現れます。
こちらの展望露天風呂の湯船にも「青森ヒバ材」を使用。その香りは人の心を和らげるアロマ効果があると言われています。また、檜に比べて水に強い性質もあるようです。展望露天風呂ではぜひ香りも楽しんでください。
貸切家族風呂にも「青森ヒバ材」を使用しています。利用時間は15:00〜20:00の間で45分間、1組1,188円で予約制になっています。チェックイン時に予約ができます。
赤ちゃん連れのファミリーやゆっくり温泉を楽しみたいカップルに人気です。
おおとり荘の温泉を楽しんだあとは湯上り休憩所へ。畳でくつろげる座敷になっており、足を伸ばして休憩できるのはもちろん、小さなお子さま連れの方にも好評です。
また、腰や足裏のマッサージコーナーもありました。
お湯のこだわりとおもてなしを評価され、
「かかりつけ湯」に認定
おおとり荘は伊豆半島の「かかりつけ湯」に認定されています。これは静岡県の外郭団体、ファルマバレーセンターによって選定され、良質な温泉とおもてなしに優れた宿として認められたことを示しています。お湯のこだわりは、源泉の温度が約60℃のため42℃位の適温にするために加水をしていますが、加水を極力抑え、源泉含有率は約90%になっています。また、おもてなしは「清潔・安心・展望・明るさ」をモットーにしているとのこと。そのため、館内に掃除が行き届いていて気持ちよく過ごせるのだと思いました。
平成28年に全客室の内装をリニューアル
客室は和室を中心に全33室。平成28年に全客室の内装をリニューアルしました。ほとんどの客室は狩野川向きにあり、全室禁煙でWi-fiの利用が可能です。
案内していただいた和室は10畳と広縁付き。シンプルながらも心地よく過ごせそうです。禁煙にもかかわらず空気清浄機が置かれ、室内の空気にも気を使っているのが伺えました。
広縁からは椅子に座って狩野川や市街の風景を眺めることができました。川の土手がすぐ近くにあるので、早朝などに川沿いを散歩してみるのも楽しいと思います。
人気の和洋室は8畳+ツインベッドが置かれた洋室で構成され、トイレとユニットバスが付いています。また、洋室ツインルームや特別室も用意されています。
宿泊料金は土日祝日も同一料金!
食事のグレードに合わせて宿泊プランが選べます
また、おおとり荘では宿泊料金が土日祝日も同一料金ということもポイントです。休前日は料金が高くなる施設が一般的ですが、いつ泊まっても(年末年始はのぞく)同一料金というのはうれしいですよね。
基本プラン(1泊2食付き)は食事のグレードに合わせ、Aコース(夕食グレートアップコース)・Bコース(スタンダードコース)・Cコースが用意されています。おすすめはスタンダードのBコース12,624円から。Cコースは食事の量を減らしたいという人向けのプランです。食事は月替わりの和食膳。伊豆の海の幸や山の幸を使った季節の会席料理を楽しむことができます。旅行会社の口コミでもおおとり荘の食事は好評価ですので期待ができますね。
お客さまは家族連れから団体まで、
さまざまな宿泊プランを用意
おおとり荘では個人からファミリー、グループ、団体のお客さまや、幅広い年齢層の方が利用しています。日帰り温泉の営業はしていませんが、昼食やカラオケ、温泉を楽しめるプランがあるそうで主に老人会の方々が利用しているそうです。
宿泊のお客さまに対しては基本プランのほか、「同窓会プラン」や、「女子会プラン」など、さまざまなプランが用意され、小さなお子さま連れのお客さまには「赤ちゃん安心部屋食プラン」が人気です。
また、100人収容できる大会議室も備えているので、平日限定で会議・研修プランも人気。
10人以上利用で1泊2食付き9,900円とリーズナブルです。15人以上利用で飲み放題付き12,500円プランも用意。プロジェクター・スクリーンやWi-fiも完備されていますので幹事さんはぜひご検討を。
静岡県内の中小企業にお勤めの方やそのご家族は電話予約にかぎり、宿泊料金から500円の割引があります。
湯種もイチオシ!
館内で過ごすリラックスタイム
滞在期間中、温泉だけでなく館内でゆっくりした時間を過ごすのも楽しいものです。たとえば、コーヒーが飲みたくなったらロビーの喫茶コーナーへ。ラウンジのソファーに座ってくつろぎのひとときを過ごすことができます。飲み物だけでなくソフトクリームも楽しめるところも良いですね。
売店では伊豆長岡や伊豆半島の特産品やオシャレな小物類を用意。とっておきのお土産選びができそうです。希望者には配送もしてくれます。
おおとり荘では季節ごとにイベントを開催しており、ロビーにさまざまな作品を展示しています。以下は取材時(2018年6月)に展示されていた作品。滞在中にこうした作品を見るのも楽しいと思います。
2018年秋以降は9月上旬〜10月中旬にかぐや姫展、11月に紙粘土人形展を開催予定です。
日本庭園には可愛い「かえる」の石像が置いてありました。とても存在感があり、気になったので由来をお伺いしたところ、温泉に入って「若がえる」、お客さまが無事に帰宅できるように「無事かえる」など、さまざまな思いを込めて「かえる」を置いたのだそうです。そんな宿の遊び心に親しみを感じてしまう湯種でした。
絶景温泉も素晴らしいですし、ぜひ一度利用してみてください。
アクセスをチェック!
「いずっぱこ」で伊豆長岡へ
電車利用の方は東海道新幹線、JR東海道本線で三島駅へ。南口から伊豆箱根鉄道駿豆線「修善寺行き」に乗り換えます。(三島駅が始発です)。
伊豆箱根鉄道駿豆線は地元の人から「いずっぱこ」と呼ばれています。2014年に放映されたテレビドラマのロケに使われ、車両に1つだけあるという幸せのハートのつり革も話題になりました(どの車両に設置されているのかはシークレットのようです)。
伊豆長岡駅までの所要時間は22分。のんびりと車窓から風景を眺めているとあっという間に到着します。
伊豆長岡駅の改札(出口)は一つしかありませんので、分かりやすいと思います。伊豆長岡駅前からおおとり荘までタクシーで約5分。徒歩だと15分ほどの距離にあります。
バスの待ち時間には駅構内の売店や駅前のお店で特産品やお土産を見るなどして過ごすことができます。駅前のお店では出来立ての温泉まんじゅうを1個から販売していますので、こちらもおすすめです。
車利用の方は、東名高速沼津ICまたは新東名高速長泉沼津ICから伊豆縦貫道→伊豆中央道経由で、おおとり荘まで30分位で到着します。
また、サイクリスト向けの対応について支配人にお伺いすると、これまで自転車でおおとり荘を訪れた人はいないとのことで、今後の検討案件に。とは言え自転車で来館される場合は対応してくださるそうですので、予約時にご確認ください。
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