伊豆市冷川 源泉湯治の宿 ごぜんの湯
※2021年2月より休業中
こだわりは自然農・自給自足、100%源泉かけ流しの湯治宿
湯種もイチ押し! マニア向けの温泉!
修善寺駅より車で15分、中伊豆の冷川にある「ごぜんの湯」。里山風景が広がり、長閑なところに佇む源泉湯治の宿です。入口には「ごぜんの湯」の簡素な表示があり、外見からして手作り風。そこを入って行くと左手に古民家調の建物があり、受付になっています。
開業は1999年。湯治宿として営業し、温泉は、もちろん源泉かけ流し。「自然農・自給自足」にこだわり、「自然に寄り添い、全ての生物を隣人とし、この世には敵などいない…」という「無敵」思想を元に、周囲の田畑で自然農法の実践をしています。日帰り温泉も利用できますが、ディープな雰囲気は温泉マニアにはたまりません。
そんなこだわりの宿の温泉を取材しました。この地に伝わる伝説から「登龍の湯」と名付けられた源泉の泉質は、ナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉。pH8.3の弱アルカリ性です。湯はかけ流しにこだわり、加温・加水もなく、もちろん循環などもない100点満点の湯遣い。源泉の温度が67℃ほどありますが、加水をせずに手作り感満載の熱交換システムで冷ましています。
自家源泉は駐車場内に置かれた源泉タンクのすぐ先にあり、ここから動力揚湯されています。飲泉用の蛇口周りに見事に形成されたプードル状の析出物に思わず、ニヤリ。これは温泉成分が析出しているからなのですが、こうした光景は温泉マニア心をくすぐります!
男湯は「龍の湯」と名付けられ、内湯と露天風呂があります。内湯はこじんまりとした檜風呂ですが、お湯がフレッシュ! お湯は無色透明、少しヌルッとした肌触りでほんのりダシのような香りがします。温めでとても快適、思わず長湯をしたくなりました。
こちらは石造りの露天風呂。敷地内の庭の中にあり、内湯よりも熱めの露天風呂に浸かりながら、ご主人と語らいのひとときを過ごしました。ご主人は気さくなお人柄で、話し好き。僧侶の資格も持っているそうです。お風呂のテーマは「余分を捨てて無に還る。いい温の為」。う~ん、深い。
露天風呂の浴槽の脇に小さな石造りの浅い箱があり、水が張られていました。ご主人に尋ねると、下半身を冷やすための水風呂とのこと。
女湯は「羽衣花の湯」と名付けられ、檜造りの内湯と石造りの露天風呂があります。温泉の成分には美肌効果の目安となるメタケイ酸も多く含まれている美肌の湯。 しかもナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉ですから、肌がスベスベになり、保湿効果も期待できます。
こちらは四季折々の自然が楽しめる、女湯の露天風呂。岩盤浴ができるスペースや、「貴石 胎内蒸気浴」と書かれた、大人が身をかがめてようやく1人入れるくらいの石造りの箱があり、これは蒸し風呂になっています。ご主人いわく、なぜ風呂が気持ち良いのか、それは「重力から解き放たれるから」「入浴中は、母親の胎内にいたころを思い出すから」だそうです。この箱には、そんな思いも込められているようです。
源泉かけ流しの足湯もあります。見ていると近隣の農家の方が作業を終えたのか、この足湯でリラックスされていました。
また、気になるものを発見。水瓶の上に「この世でいちばんおそろしいものがいます。のぞいてはいけません」と書かれた木材がのせられていました。おそるおそる覗いてみると、するとそこには…。
また、駐車場には「昔ながらの風呂」とかかれた温室のような箱が。こちらも蒸し風呂で、サイズは一人ギリギリ。入ってみると、中の壁面に笹竹が這わせてあり、ここに暑い源泉をかけることで、室内に熱気が充満します。原始的な造りですが、なかなか快適な空間。ただし通りから丸見えになるため、裸では入りにくい感じです。
また、この箱には小さな扉があり、これを開けて「美顔呼吸器用の穴」に顔だけ入れることもできるため、女性に人気だとか写真は穴に顔を入れている温泉ソムリエの佐藤ガチャ氏。
温泉を堪能した後は、ご主人の田畑を案内していただきました。そこで驚いたのは畑というより、広々とした野原に、ポツリポツリとかぼちゃ、とうもろこし、大豆、ナスなどの野菜が植えられていたこと。これは害虫駆除や除草をせず、植物の本来の生命力に期待して作物を育てる自然農法を実践しているからなのだそうです。最終的に目指しているのは、種をまかず、自然に任せ収穫すること。
田んぼは一般よりも一ヶ月遅れとのこと。耕さないため、稲の丈が短いのが特色。無農薬のため、初夏になると水田に蛍が飛び交います。「自然に恵まれ、良いところですね!」と感想を言うと、「昔はもっと良かったよ…」とご主人。
アイガモ農法を行っているわけではないのに、用水路に住み着いているアイガモ親子。お母さんガモは猛禽類や動物に捕獲されてしまったのか、いなくなってしまったそうです。
鳥小屋ではウコッケイをはじめ、鶏類を飼育しています。これも自給自足のため。お土産に産みたてのウコッケイの卵をいただきました。自宅に持ち帰り、生で食したところ、小ぶりながらも濃厚な味わいでした。
ウサギ小屋には穴ウサギがたくさん。糞を堆肥に利用するために飼育しています。
「人間は縄文時代にもどって暮すのが幸せかもしれない…」とご主人がポツリ。テレビは有害と考え、宿のテレビはすべて捨ててしまったそうです。
宿では以前は食事も提供していましたが、現在は自炊専門。「自然農で作物を育てているため、宿泊者全員に食事を出すのは難しい。そろそろまた食事を始めようかと準備しています」とご主人。次の機会には、ご主人こだわりの無農薬のお米や野菜などを食べてみたいと思った湯種でした。
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