西伊豆 桜田温泉 山芳園
目指しているのはショーアップ・ファーム
里山体験で四季折々の楽しみ方をレクチャー!
宿のご主人と語り合いながら、夜が更けていく…。そんな楽しみ方ができるのも一軒宿のいいところです。ご主人に旅館で行っている里山体験をはじめ、山とのかかわり方など、いろいろお話を伺いました。朗らかに、かつ気さくに語ってくださるご主人。農業や山林、そして自然への思いが伝わってきます。
露天風呂から出てから、囲炉裏のあるロビーでご主人と語らいの時間を持つことができました。そこで印象深かったのは山芳園さんで行っている里山体験のこと。
「私はショーアップ・ファームといいますか、農業をショーアップしてみせようと考えています。例えば、旅館の目の前に水田があり、最近ではイチジク畑も作りました。イチジク畑の周りはお掘りになっていて、合鴨農法のために飼っている鴨が泳いでいます。やがてそこには蓮の花が咲き、6月になればホタルを見ることができるでしょう。私には目にも楽しく農業や自然を伝えていきたいという思いがあります。
ご希望のお客さまがいらっしゃれば、チェックアウト後、11キロほど離れた自家所有の山林にご案内し、里山体験などをしていただきます。季節に応じて椎茸や柑橘、山菜などの収穫体験や夏のクワガタ獲りが人気です。または植物観察など、四季折々の楽しみ方が山にはあります。
今はグリーンツーリズムが注目されていますが、私どもが行っているのは家庭教師型。マンツーマンで全体の流れがわかるようにレクチャーします。つくる楽しみや食べる楽しみも伝えていきたいですね」。
人間が山に入るには山からお金を生み出すことが必要!
また、森林と人間との共生についてのお話も興味深く、思わず聞き入ってしまいました。
「原生林はもともと人間が入ってはいけないところで、人間が生きられる森林とは人工林なのです。だから管理して初めてバランスが成り立つんですよ。バランスが崩れると山崩れが起きる。そのバランスを保つためには人間が山に入らなくていけません。人間が山に入るには生産活動が行われて、山から金を生み出すことが必要です。
桜田温泉の山林では、広葉樹林(主にクヌギ林)を作り、伐採した樹木は、椎茸栽培や炭として利用し昔ながらの形での活用・循環スタイルを目指しています。
また、竹林の手入れのためにも、竹炭を焼き、工芸炭として仕上げ、炭のコップや花器なども作っています。
どういう風に人が山に入るかというのは自分にとってライフワークなんですよ。
山林の限られた面積で自分なりに何かできるか試していきたいのです。山に入ってある程度おこずかいが入るカタチになれば、山が蘇ります。
私どもは旅館業ですから、お客さまにも還元できます。お客さまも山に足を運んでくれます。
そして収穫したものを美味しい、不味いとか感想も言ってくださるので、はり合いもあります」。
もともと大学で農業や植物生理学を学び、アメリカの農場で研修経験も持つご主人。お話の内容が深くて感心しました。そんなご主人が営む旅館は温泉やお料理を楽しむだけでなく、自然とのふれあいも満喫できます。
今回は時間の都合で、山には行けませんでしたが、次回は必ず連れていっていただこうと思った湯種でした。