静岡市葵区 石部屋(せきべや)
江戸時代から続く安倍川餅の老舗
出来立ての安倍川餅とからみ餅を歴史とともに味わう
安倍川餅は、徳川家康が安倍川上流にある井川金山へ視察に訪れたときに、砂金(金の粉)にちなみ、「安倍川の金な粉餅」として献上したところ、たいへん喜ばれたことから「安倍川餅」と呼ばれるようになったと言われています。
静岡市葵区の安倍川橋のたもとには昔から愛されてきた静岡名物の「安倍川餅」を売る店が軒を連ねています。その中でも最も長い歴史を持つ石部屋(せきべや)を訪ねました。
石部屋は井伊湯種(いいゆだね)の後輩が推薦してくれたお店です。江戸時代から続くお店で創業は文化元年(1804年)。210年以上の歴史を誇る老舗です。
平日の14時頃に伺うと店内には先客が1人いらっしゃいました。店内は土間に茶店風の赤い布を敷いた座席とちゃぶ台を2つ置いた小上がりがあり、ノスタルジックな雰囲気です。
壁に飾られた古い写真は大正時代の石部屋。創業以来、この地で営業を続けています。
多くの著名人が訪れており、壁の短冊はサイン代わりに書いたものです。
石部屋で楽しめるのは昔ながらの手作りにこだわった安倍川餅とからみ餅。注文してから作ってくれるため、いつでも出来立ての美味しさを味わえます。
15代目のご主人が安倍川餅を作る様子を店頭で拝見しました。もち米100%のつきたての餅を親指大に絞り、手早くきな粉にまぶしたり、こし餡にからめていきます。無駄のないリズミカルな動きはまさに職人技。
1皿にきな粉餅とあんこ餅を5個ずつのせ、きな粉餅にはたっぷり白砂糖をかけて出来上がりです。
元々の安倍川餅はきな粉のみをまぶしたもので、評判が高くなったのは国内でとても貴重だった駿河の白砂糖を上にのせたことから。寛政年間(1789-1801)には駿河・遠州でサトウキビの栽培が始まったと言われており、地元で砂糖が作られていたそうです。
歌川広重の版画「東海道五十三次」にも安倍川餅の店が描かれていますが、江戸時代から続くお店は石部屋のみとなりました。
店内に文化14年(1817年)に発刊された東海道五十三次名所名物番付が貼られており、じっくりと見るとそこには「安倍川餅」の文字が。「うまいもの名物番付」の常に上位に名を連ねていたそうです。
出来立ての安倍川餅は柔らかく、噛みごたえもあるふんわりとした食感。きな粉餅にのせられた白砂糖がサラリと舌の上でとけていきます。しっとりとしたあんこ餅もほどよい甘さでいくつでも食べられそうです。作り立ての安倍川餅を食べたことがなかったので、その美味しさに感動した湯種でした。
お土産用の安倍川餅も2人前から販売しており、賞味期限は翌日中とのことです。
ここでしか食べられないからみ餅も絶品
お店でしか食べられないからみ餅は、湯煎した餅に生わさびと醤油を付けていただきます。ツンとしたわさびの香りが鼻腔をくすぐり、ふんわりとした餅が見るからに美味しそう。
わさびは地元のものを用いており、わさび栽培発祥の地と言われている静岡市内の有東木(うとうぎ)から仕入れているそうです。もち米の旨みが感じられる餅とスッキリとした辛味がよく合い、とても気に入りました。かつては酒のつまみとして出されていたそうで、確かに日本酒が欲しくなる味わいです。
壁には古い写真とともに石部屋のかつての包装紙が飾られていました。戦後まもなく作られたもので6色刷りだったそうです。版木も残っており、当時はお店で一枚一枚、手刷りをしていたというからスゴイですよね。
江戸時代から街道名物であった安倍川餅。歴史が感じられる石部屋で出来立てを味わってほしいと思いました。
アクセスをチェック!
安倍川橋から徒歩1分
駐車場は店舗の右側にあり、3〜4台駐車可能です。駐車場のスペースが若干狭いので車の出し入れにはご注意ください。また、駐車場入口の左側にある「安倍川義夫の碑」も目印になると思います。
JR静岡駅からは約3kmの距離がありますので、バスでのアクセスが便利です。北口側にある7番乗り場から発車するバス(※用宗線を除く)を利用ください。中部国道線[84]丸子営業所経由 岡部営業所・藤枝駅行き、丸子線[80]丸子営業所行きなどに乗り、10〜15分位でバス停「安倍川橋」に到着します。バス停は石部屋からは徒歩1分位。日中は静岡駅前から1時間に10本位バスが出ていますので、行きやすいと思います。
※ただし、用宗線(もちむねせん)はバス停「安倍川橋」に停まりませんので、ご注意ください。
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