静岡市清水区 蕎麦茶寮 ゆーらく柏尾
古民家で楽しむ手打ち十割そばと岩盤湯
ゆったりとした時間が流れる空間で田舎料理を味わう
静岡市郊外にある古民家で本格十割そばとお風呂を楽しめると聞いて、「蕎麦茶寮 ゆーらく柏尾(かしお)」を訪ねました。最寄駅のJR清水駅からは車で15分位、静岡駅からは30分位の距離にあります。
この日は静岡駅周辺から車でゆーらく柏尾へ国道1号線経由で向かいました。市街地を抜け、瓦屋根が目立つ山間の集落に入ったら、目的地までもう少しです。
柏尾地区の山里の中にあり、昭和初期に建てられたという古民家は瓦屋根となまこ壁が印象的です。
玄関には木の下駄箱が備えられ、その上には「千客萬来」の看板が掲げられていました。ここでは食事処と日帰り入浴のほか、1日1組限定の「民宿かしお」も営んでいます。
オーナーであり、一級建築士の栗田さんが手入れしている古民家は、築85年を過ぎているというのに保存状態が良く、昔ながらの趣を残しながら快適に過ごせる空間になっています。
食事処で楽しめるのは手打ち十割そばを中心に、地元の素材を使った田舎料理です。事前の予約制になっており、通常のメニューだけでなく、予算に応じてメニューの相談ができます。
ランチタイムに井伊湯種(いいゆだね)がオーダーしたのは、人気の手打ち十割もりそば定番コース。日替わり三種盛りの前菜と飯玉(めしだま)、季節の天ぷら、もりそば、甘味がセットになっていて、1人2,400円から。オーナーが心を込めて作るメニューを楽しめます。
この日の前菜は卵焼きとおから、青菜の和え物の三種盛りでした。一緒に出てきたのは昆布や梅を使った一口サイズのおにぎり。素朴なメニューはお酒のつまみにもぴったりで、思わず蕎麦前(蕎麦が出てくる前につまみとお酒を楽しむこと)を楽しみたくなります。
続いて季節の天ぷらが登場。この日はナスやサツマイモ、ししとう、かぼちゃなど、野菜の天ぷらを味わうことができました。野菜は自分の家の畑や地元で採れたものを使っているそうです。衣がサクッとしていて揚げたてをおいしくいただきました。
十割そばは信州産そば粉を用い、水とそば粉だけで手打ちしています。最初は小麦粉のつなぎを入れた「二八そば」を作っていたそうですが、他店との差別化を図るために試行錯誤を重ね、十割そばを出すようになったとのこと。自分の所有する山の畑でもそばを栽培しており、自家製のそば粉をブレンドすることもあるそうです。
十割そばは、そば粉の風味を丸ごと味わうことができるので、贅沢だと思いました。古民家の風情がある空間の中で、丁寧に作られた料理をゆっくり味わえるのも魅力です。
日替わりの甘味は、そば粉のガレットでした。食事の〆に洒落たデザートが出てきて少しびっくり。砂糖などで煮詰めたリンゴのスライスを、そば粉を使って薄く焼いた皮で包んでおり、生クリームとともにいただきます。しっとりしたそば粉のガレットとリンゴの組み合わせがとても新鮮でした。
お店のデザートメニューにも昼間の女性客をターゲットに、そば粉のガレット(単品400円)を用意しているそうです。
また、静岡育ちの地鶏を用いた軍鶏鍋(しゃもなべ)もおすすめとのこと。軍鶏はゆーらく柏尾から1時間ほどのところに位置する梅ヶ島温泉に住む友人から仕入れているそうです。軍鶏鍋は梅ヶ島温泉の名物。市街からも近い、ゆーらく柏尾で楽しめるのはうれしいですね。絶妙な歯ごたえの軍鶏肉をたっぷり野菜とともに甘めのつゆでいただきました。
料理だけでなく、箸も敷地内にある梅の木を使った手作りということで、温かみがあり素敵でした。
弱アルカリ性の井戸水を使った岩盤湯
ゆーらく柏尾で食事のほかに楽しみなのが日帰り入浴。1人600円で利用できます。浴室は2階にあり、男女別の浴室は、家庭のお風呂にお邪魔するような雰囲気。小さな脱衣所とタイル貼りの浴室が設えられていました。
お風呂のお湯は温泉でありませんが、庭を掘ったら出たという約17℃の弱アルカリ性の井戸水を沸かしています。ゆーらく柏尾では30年以上前から日帰り入浴の営業をしており、かつては「柏尾温泉」とも呼ばれていました。無色透明の良質な水は冷鉱泉として期待されていましたが、温泉法で定められた成分に該当しなかったようです。
湯船の底には北海道産の黒鉛珪石(ブラックシリカ)が敷き詰められており、岩盤湯を楽しむことができます。黒鉛珪石は天然ミネラルをふんだんに含み、遠赤外線やマイナスイオンを放出すると言われ、岩盤浴にも使われている天然鉱石ですが、お風呂の中で使われているのはめずらしいですね。お湯が黒く濁っているのは黒鉛珪石がお湯に溶け出しているため。想定外の黒湯に浸かることができ、色が付いた湯が大好きな湯種はテンションが上がりました。
ゆーらく柏尾の岩盤湯は、知る人ぞ知るお風呂ということで、評判は上々。よく温まり、湯上り後は肌がツルツルになると人気だそうです。
客室は木の温もりがする耐震性のシェルタールーム
古民家で「民宿かしお」も営業しており、1日1組のみ宿泊することができます。客室に入った途端、ふわりとヒノキの香りに包まれました。客室は富士山麓で伐採されたヒノキを使っています。一級建築士でもある栗田さんが設計した和室は、地震に強いシェルタールームとして利用できる仕様になっているそうです。パテント(特許)を取得しており、これまで見たことがないような造りですので、建築好きな人にはたまらないと思います。
築85年以上を経た古民家とモダンな和室の組合せはユニークだと思いました。ゆったりとした時間を過ごせると思いますので、ぜひ一度訪れてみてください。
より大きな地図で 温泉グルメ探訪 を表示