大滝ホテル 湯河原温泉
名勝「不動滝」の近くで自家源泉の温泉と自然を満喫
温泉プールや混浴野天風呂も楽しめます
湯河原の名勝「不動滝」のふもとに位置し、2万坪ほどの緑深い敷地内に佇む大滝ホテル(おおたきホテル)。敷地内から湧出する自家源泉を3本所有し、湯河原随一の湯量を誇る宿です。
落差15mの「不動滝」は、大滝ホテルから歩いて2〜3分ほどの距離にあり、滝の左側に身代わり不動尊、右側には出世大黒尊(しゅっせだいこくそん)が祀られ、隠れたパワースポットとしても知られています。そんな不動滝に隣接した山の斜面に立地する大滝ホテルは、深い緑に包まれ、敷地内には観音様が祀られています。
昭和37年(1962年)の創業から57年目を迎えた大滝ホテルは歴史が感じられる重厚な佇まいです。
大滝ホテルは豊富な湯量を活かし、大浴場をはじめ、客室の内風呂、混浴野天風呂や温泉プールなどに源泉を利用し、温泉施設に力を入れています。
また、玄関用スロープや車椅子用エレベーター、ウォシュレットトイレなどを設置し、誰でも快適に過ごせるよう配慮されています。こうした取組みが評価され、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)から、シルバースター(高齢者に配慮し、人に優しい宿)に認定登録されています。
館内は古き良き時代の面影を残すレトロな雰囲気。ロビーは1階と2階にあり、クラシカルな階段や照明が素敵です。
1階ロビーには手すり付きスロープが設置されており、ロビー奥には車椅子用エレベーターがあります。
敷地内から湧き出す3本の自家源泉
万葉集に詠まれた湯河原温泉。その歌からも湯河原の谷間から温泉が噴出していたことがわかるそうです。効能高い「名湯」として歴史のある湯河原温泉の源泉は現在108本あるそうで、そのうち3本を大滝ホテルが所有しているとのことです。
大滝ホテルの源泉は創業者の石川菊太郎氏が苦心研究の末、昭和30年(1955年)に掘り当てたものだそうです。現在、地下350mから毎分約150ℓで汲み上げている源泉の泉質はナトリウム・カルシウム−塩化物・硫酸塩温泉になります。源泉の温度は88.9℃の高温泉で、効能は切り傷、火傷、慢性皮膚病などに効くといわれています。
日帰り入浴もできる、趣の異なる2つの大浴場
大滝ホテルには5階に「滝の湯」と「蛍の湯」という趣の異なる大浴場があります。日帰り入浴もでき、気軽に立ち寄ることができます。
2つの大浴場は男女入替制。早朝6時に男湯と女湯が入替わります。
取材時に男湯だった「滝の湯」に入りました。脱衣所は広々としており、中央に休憩用の椅子と冷たい麦茶が置かれていました。
創業当時と思われる、ノスタルジックな源泉湧出地の写真も飾られていて、大滝ホテルの源泉への想いが感じられます。
大浴場には内湯と露天風呂があります。「滝の湯」の内湯は、「蛍の湯」より広い造りになっています。黒系で統一され、落ち着いた雰囲気。滝をイメージして壁面から源泉が流れる演出が印象的です。
洗い場は大きな窓から外の景色を眺められるようになっており、とても開放的です。体を洗いながら景色が楽しめる洗い場は、ありそうでなかなかありません。使う人のことを考えて、窓ガラスに鏡が貼られていたり、カランの上に鏡が置かれていて面白いと思いました。
「滝の湯」の露天風呂から見えるのは湯河原の山の景色。湯船には背の高い青石が配されています。柵から下を見下ろすと藤木川の流れが見えました。湯船の深さは約70cmと深く、手足を伸ばしてゆったりと入れます。
露天風呂では肌にしっとりなじむ、やわらかなお湯と深い緑の眺めを満喫。取材時は芽吹き前の季節でしたので、新緑や紅葉の時期にまた訪れたいと思いました。
「蛍の湯」の内湯は「滝の湯」よりも小規模ですが、露天風呂は広めになっています。露天風呂は「滝の湯」と同様に湯河原の自然を眺められるロケーション。こちらも季節ごとの眺めが楽しみです。
大浴場は源泉の温度が高いため、加水による温度調整しているとのこと。常に新しい源泉をかけ流しにしていますが、清潔を保つために循環・ろ過方式を併用しているそうです。
観音様が見守る混浴野天風呂と足湯
次に8階の屋上にある宿泊者専用の混浴野天風呂と温泉プールに案内していただきました。屋上に出ると、「奉納」と書かれた石灯籠(いしどうろう)があり、屋内とはうってかわって厳かな雰囲気。こちらは屋上庭園になっているようです。
石灯籠の左側に混浴野天風呂がありました。湯河原で唯一、水着で入れる男女混浴の露天風呂だそうです。野天風呂は山肌を利用して造られており、とてもワイルド。源泉が滝のように流れて、湯船に注がれています。
一般的に混浴温泉は時代の流れとともに減り続ける一方ですから、とても貴重な存在。こちらは水着着用ですので、どなたでも気軽に楽しめる混浴風呂だと思います。もちろん、井伊湯種(いいゆだね)と取材同行した若手スタッフも水着を用意して入りました。
ふと、斜め上を見上げると、山の斜面に観音様がいらっしゃいました。高さは3メートルで、青銅で作られているそうです。これまでお地蔵様が見守る露天風呂に入ったことはありますが、観音様が見守る露天風呂というのは初めて。とてもめずらしいですね。観音様に見守られながらの入浴は穏やかな気持ちになります。
この観音様は大正3年(1914年)に、元々この土地の持ち主だった元廣部銀行の頭取、廣部清兵衛氏が友人の東郷平八郎氏のために建立したものだそうです。廣部氏の姓をとって廣部観音と名付けられました。当時、湯河原を含め、北海道と福井に4体の観音様が建立されましたが、戦時中に金属類の供出のためになくなってしまい、今でも残っているのは大滝ホテルの観音様だけだそうです。
観音様を祀る祠などもそのまま残されており、現在は大滝ホテルを守ってくれる観音様として手厚く祀られています。願い事が叶うご利益もあるそうですので、ぜひお参りしてみてください。
屋上庭園は、かつては観音様をお参りする参道になっていたらしく、その名残が感じられます。その自然に溶け込むようにして作られた野天風呂は素晴らしいと思いました。観音様が鎮座する山の斜面には遊歩道が作られており、その先には大滝ホテルの源泉の場所もあるそうです。
野天風呂のすぐ近くに足湯も併設されていました。ウッドデッキの休憩スペースが設けられ、ベンチも置かれています。山の空気を感じながら、ゆっくりとくつろげる雰囲気が素敵です。
一年中利用できる温泉プール
また、大滝ホテルで見逃せないのは、野天風呂に隣接した温泉プールです。豊富な自家源泉を活用するために作られた温泉プールは一年中利用することができます。
プールの長さは15m、深さは110cmあります。湯河原で温泉プールがあるのは大滝ホテルだけとのこと。あまり泳ぎは得意ではない湯種ですが、温泉プールと聞くだけで、なぜか張りきってしまいます。源泉が高温のため、加水をして温度調整をしているそうですが、夏場は26℃、冬場は31℃ほどに設定されています。温泉だけあって、お湯がやわらか。源泉をたっぷり使った温泉プールなんて、とても贅沢です。しかもぬる湯好きの湯種にはたまりません。バシャバシャと気持ちよく泳ぐことができ、とても楽しい時間を過ごせました。
また、子供用の温泉プールもあります。20cmの深さですから、お子さまが安心して入れますね。
温泉プールを楽しんだあとは、野天風呂でまったりするのも格別。ジワジワと体が温まり、これがまた心地よいのです。お風呂好きの方なら足湯を含め、屋上庭園にある3つの温泉施設を行ったり来たりして楽しめると思います。
また、脱水専用の洗濯機も置かれており、野天風呂やプールで使用した水着を脱水することができるのは、ありがたい心遣いです。
もし水着を忘れてしまったら、水着のレンタル(1着210円)もできます。他ではなかなか味わえない大滝ホテルの温泉プールや混浴野天風呂をぜひ楽しんでみてください。
卓球やテニスも楽しめる
温泉といえば、卓球が定番。温泉卓球はかつての盛り上がりはないものの、根強い人気があるようです。8階のラウンジでは卓球を楽しむことができ、1グループ30分520円で利用できます。温泉に入ったあとは卓球で盛り上がるのも楽しいと思います。
このラウンジには無料で利用できるマッサージチェアやバランスボールなどが用意されていました。温泉後の休憩や軽い運動を楽しむのにぴったりですね。
また、会議室や宴会場がある6階の屋外スペースには、なんとテニスコートがあり、驚きました。テニスで汗をかき、温泉ですぐに流せるのはいいですね。1グループ1時間1,100円で利用できるそうです。
客室の内風呂は100%源泉かけ流し
大滝ホテルの客室は全41室。全室に温泉内風呂とウォシュレットトイレが備えられています。そのうち、露天風呂付き客室が6室、洋室が2室用意されています。客室のお風呂は100%源泉が給湯されており、蛇口をひねると、何も手を加えていない高温の自家源泉が出てきます。お湯を出す量を調整しながら、加水をせず湯船にためて入浴に適した温度にしていけば、100%源泉かけ流しを楽しめます。これはお風呂好きにはかなりうれしいこと。大滝ホテルの自家源泉そのものを客室で堪能できるのは素晴らしいと思います。また、大浴場や野天風呂、温泉プール、足湯に加え、全客室の内風呂で温泉を楽しめるのは、豊富な湯量の証だと思いました。
湯種もイチオシ!
自然豊富なロケーションとパワースポット
宿全体が山の斜面に立地しており、緑に包まれた大浴場の露天風呂や野天風呂が素敵でした。四季折々の眺めも楽しみな宿だと思います。大滝ホテルの野天風呂には観音様がいらっしゃいますので、パワースポットファンの方はさらに楽しめるかもしれません。
また、大滝ホテルはテレビドラマのロケで使われたこともあり、そのときは近くの不動滝が登場するそうです。観光名所の不動滝にもぜひ行ってみてください。
電車・バス利用の方はJR湯河原駅の改札を出て左側に路線バス乗り場があります。2番乗り場からバスに乗って約15分、「不動滝前」で降りてすぐのところに大滝ホテルがあります。バスは10分間隔で出ているそうですので、アクセスは良好だと思います。
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