ままねの湯 湯河原温泉
源泉は浴室のすぐ横!
湧きたての新鮮な湯をかけ流し!
湯浴みに集中できる上級者向け温泉
湯河原では珍しい「湯治宿」です
今回は、湯河原温泉を代表する名湯の一つとも言われている温泉施設をご紹介します。
実は、湯河原の温泉を紹介するのにここは絶対に外せないと思い、「井伊部長の温泉グルメ探訪」レポートを始めた当初に取材のお願いをしたことがあるのですが、その時は「うちは湯治宿で、たくさん人が来られても困るので」と断られてしまいました。それから約10年が経過し、あらためてお願いしたところ、「地元の良い温泉を全国の皆さんにぜひ知ってもらいたい」という熱意が伝わったのか、今回やっと取材させていただくことができました!
湯河原温泉中心部の路地裏にある「ままねの湯」は湯河原では珍しい湯治宿で、日帰り入浴も受け付けてくれます。
少しわかりにくい場所にあり、路地の入口にある電柱の「ままねの湯→」の看板を見逃すと辿り着くのに苦労するのでご注意を。
この湯治宿ができたのは100年以上前の明治時代。現在の女将さんで4代目になります。
湯河原の温泉は、万葉の時代からあったといわれていますが、「ままねの湯」の初代のご主人は、万葉の言葉からこの湯治宿の名前をつけたそうです。
「まま」は崖、「ね」は根本を表す言葉で、「ままねの湯」→「崖の下の岩場から湧き出す湯」という意味になります。
明治、大正、昭和という時代の流れの中で、数々の戦争を経験してきましたが、戦争で傷ついた体を癒すためにこの湯治宿を利用する人が数多くいたそうです。現在でも、湯治目的の利用者が多く、常連さんや病院からの紹介など口コミがほとんどです。
「ままねの湯」の最大の特色は、あくまで「湯治宿」であり、一般的な温泉旅館とはまるで違うこと。
浴室はシンプルな内湯が男女各一つだけ。浴槽は小さく、特に眺望もない。この湯を楽しみ、体を癒すだけの空間です。宿泊する部屋はありますが、とてもシンプルです。また、料理も家庭料理になります。
料金は、素泊まりは4,000円、朝食だけ付けると5,000円、夕食だけなら6,000円、2食付きの場合は7,000円(いずれも税込)と、とてもお手頃価格で、湯治目的の長期滞在がしやすい料金設定になっています。
ただ、お湯は素晴らしい。すぐ横にある源泉からの湯を何も手を加えずそのまま浴槽に投入している純粋な「源泉かけ流し」です。温泉好きならぜひ入ってみたい温泉です。
なお、ネット上には「一般の日帰り温泉ではないので、治療や湯治目的の人しか入浴できません」というようなコメントが多く、なんとなくハードルが高いイメージがあるので、実際はどうなのか女将さんに聞いてみました。
その結果、特に治療目的でなくても日帰り入浴は300円(税込)で誰でも利用できるそうです。ただし、海水浴帰りに来て館内を砂だらけにしたり、大勢で来てワイワイと入浴したりするような人はお断り、ということ。
ここは湯治宿であり、連泊で療養している方のための温泉なので、こういった方の治療の妨げにならないよう、静かにマナーを守って湯浴みしてくれる人なら日帰り入浴も歓迎します、とのことでした。
受付時に女将さんから「治療ですか?」と聞かれたら、『治療ではないですが、純粋に温泉を楽しみたくて来ました』と答えれば大丈夫です。
「ままねの湯」の入り口。日帰り入浴の際には、階段を上がって受付で料金を支払います。タオルや石鹸を持っていない場合は、ここで購入できます。
受付では、「ままねの湯」のオリジナルタオルや石鹸、お土産用の入浴剤なども販売しています。
ままねの湯の源泉は「霊泉」とも言われ人気があるため、ペットボトル入りでの販売もしています。熱い源泉をそのまま封入するために耐熱ペットボトルを使用しているとのことで、少し厚めのボトルに入っています。ちなみに、あくまで浴用ですので飲むことはできません。
また、この湯の成分を調べて調合したオリジナルの入浴剤も販売しています。
これらは、湯河原町が推進している「made in ゆがわら」認定商品になっており、ままねの湯のほか、ネット通販サイト「みんなのお風呂」でも購入することができるそうです。
女将さんから「これが、すごく評判なんですよ」と聞き、さっそく湯種はこの入浴剤を自宅のお風呂に入れてみました。無色なので見た目は普段と変わりませんが、お湯が柔らかく感じられ、キュッキュッとした浴感。そして湯上りは、いつまでも肌がしっとりするのが印象的でした。これは、肌荒れで悩まれている方に良さそうです。
また、ままねの湯では温泉スタンドの許可も取得しており、ポリタンクを用意すれば20Lあたり800円で持ち帰ることもできるほか、20Lポリタンク付き2,200円での販売もしています。
浴室のすぐ横の源泉から
手を加えない新鮮な湯をそのままかけ流し
受付で料金の支払いを済ませたら、階段を降りて横にある「一回入浴者入口」から浴室に向かいます。
「一回入浴者入口」の上には、「弘法大師御導湯」というこの温泉の由来を記した歴史を感じさせる木板が掲げられています。
入口を入ると、ステキなタイルを張った階段があります。この階段を降りて浴室に向かいます。
ではまず、「男湯」から見てみましょう
「内湯」には岩で作った湯口があります。
この岩は、富士山の溶岩でできた岩を切り出して作ったもの。まだ富士山が世界遺産になる前は、岩を切り出すことが許されていて、石屋さんに注文して誂えたそうです。
岩の横にはカエルが置かれています。湯治客が「無事帰る」という願いを込めた縁起物とのこと。
また、この湯口には、豊かな温泉成分の証として白い析出物が付着していています。湯治客の中には、これを見て「この温泉は本物だ」と納得される方もいるそうです。
この湯口から、源泉はいったんタイルの下を通り、浴槽に投入される、という面白い構造なのですが、これも熱い源泉の温度を自然に下げるための工夫の一つだと思われます。
次に、「女湯」を見てみましょう。
井伊湯種(いいゆだね)は何度か訪れていますが、どちらかと言うとヌル湯好きなので、ここは久しぶりの訪問です。
浴槽は小さく、特に眺望もない。この湯を楽しむだけの空間。でも、温泉好きにとっては、湯浴みに集中できるのがとても良い。何より、源泉が浴室のすぐ横にあり、湧きたての新鮮な湯がかけ流しで供給されているのが素晴らしい!
問題は、引湯距離が短いため、熱い源泉の温度が下がらないこと。
「ままねの湯」では、約80℃という高温の源泉を薄めたくないので、加水せずに少しずつ浴槽に投入し温度調節しています。
この日の浴槽の湯温は約46℃。一般的に46℃のお風呂と言えば、熱くてなかなか入れないのですが、この温泉は46℃でもなぜかスッと浸かれてしまう、不思議な感じです。とは言え熱湯なのでいつまでも入ってはいられず、出たり入ったりしながら楽しみました。
湯治宿として
客室もあります
「ままねの湯」の客室はとてもシンプルです。
病気や傷の治療や快癒を目的としたシニア層が多く、暑い時でも扇風機だけ。クーラーは身体を冷やしすぎるため、ありません。そして料理は、家庭料理です。
その分、料金も安いため、長期間でも無理なく利用できます。
かつては、客室は10部屋ありましたが、今は3畳間や4畳半は使わずに、8畳の部屋を中心に5部屋だけ稼働しています。
そんな、今では珍しい「湯治宿」ですから、普通の温泉旅館と勘違いして予約されると困るため、宣伝は一切していませんし、ホームページもありません。
「ままねの湯」をよく知る常連客や病院などからの紹介、口コミで支えられています。
湯河原では珍しい湯治宿
日帰り入浴は温泉マニアにおススメです!
浴室のすぐ横にある源泉をかけ流しています。
純粋に良泉を楽しみたい方には、ぜひ一度日帰り入浴を体験していただきたい湯治宿です。
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