しずもーる西ケ谷(静岡市西ケ谷資源循環体験プラザ)
ごみ焼却時の熱エネルギーを利用した天然温泉を満喫
4R体験講座や無料足湯も楽しめます
2014年にオープンした「しずもーる西ケ谷(静岡市西ケ谷資源循環体験プラザ)」を訪ねました。しずもーる西ケ谷は、ごみの減量と資源の有効活用、資源循環について体験講座などを通じて楽しみながら学べるユニークな施設です。
JR静岡駅から車で約15分のところに位置し、静岡市の西ケ谷清掃工場に隣接した2階建ての施設です。
しずもーる西ケ谷には天然温泉を利用したお風呂や足湯がありますが、大々的に宣伝していないため、知る人ぞ知る存在のようです。
玄関はスッキリとした印象があり、靴は鍵付きの靴箱に預けます。靴箱を開けると館内用のスリッパが収納されており、これはなかなか良いアイデアだと思いました。
入浴券は館内の自動販売機で購入します。入浴料は大人410円。浴室にはボディーソープが用意されていますが、シャンプー・リンスはありませんので、洗髪をする人は100円で購入することができます。タオルも販売されていますので、気軽に訪れることができますね。
天然温泉とサーマルリサイクルを同時に体験
1階に男女別の浴室があり、定期的に男女入れ替えになるそうですが、取材当日は手前が女湯、廊下の奥が男湯でした。
明るい雰囲気の脱衣所は清潔感にあふれ、ドライヤーも用意されています。
浴室には内湯が一つのみですが、天然温泉を利用しています。源泉は敷地内にあり、施設の建設の際に掘ってみたところ、地下約300メートルで温泉が出たそうです。
この温泉は西ケ谷清掃工場でごみ処理の際に発生する余熱を利用して加温しています。ここでは大きな窓に面した明るい湯船でまったりしながら、サーマルリサイクルを体験できます。サーマルリサイクルとは、廃棄物を単に焼却処理せず、焼却の際に発生する熱エネルギーを回収・利用すること。天然温泉を楽しみながら、こうした資源の有効活用を体験できるのがこの施設の特色です。
下の写真は館内に貼られていた施設案内です。これを見ると、しずもーる西ケ谷が清掃工場のごみの焼却時に発生した熱エネルギーを利用している施設であることが一目瞭然です。高温の蒸気による温泉の加温だけでなく、ボイラーで発生した蒸気を使って作られる電気を施設で使っていることがわかります。
温泉の温度は40℃に設定されているそうです。この日は若干ぬるめに感じられ、窓の外の木立を眺めながら長湯がしたくなりました。ほんのり硫黄の香りがするお湯は無色透明で泉質は含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉。源泉名は西ケ谷温泉といいます。硫黄を多く含み、pH8.9という高いアルカリ性のお湯は美肌効果が期待できます。あまりクセのないお湯で同じ西ケ谷地区から湧出する強烈な硫黄臭のカブラヲ温泉と泉質は同じですが、色や浴感が異なり、興味深いものがありました。
湯船の一角には寝湯ができるスペースもあります。
湯船の傍らにさりげなく時計が置かれているのも良い感じでした。入浴時に眼鏡をはずすと遠くが見えないという方も近くで時間が確かめられるのは便利ですね。
洗い場にはボディーソープのみが用意されています。
女湯の浴室は男湯と造りは同じですが、壁のタイルの色が少し異なります。こちらも明るい雰囲気の浴室ですね。
湯上がり後は休憩所でくつろぐことができます。アルコールは禁止ですが、お弁当や飲み物の持ち込みはOK。利用時間の制限はありませんので、時には地元の方の憩いの場になることもあるそうです。
休憩所の大きな窓からは広々とした景色を眺めることができ、開放感があります。
吹きガラスなどの4R体験講座が人気
しずもーる西ケ谷では「ごみとして捨てるのではなく、再生利用できるものは再生利用して使いましょう」というコンセプトのもと、びんを再生利用した吹きガラス講座、古い着物を素材にしたつるし飾り制作など、さまざまな4R体験講座を開催しています。
4R(フォーアール)という言葉はあまりなじみがないと思いますが、4RとはRefuse(リフューズ=断る/いらないものはもらわない)、Reduce(リデュース=減らす/できるだけごみを出さない)、Reuse(リユース=そのまま再使用する)、Recycle(リサイクル=再生利用する)の意味。静岡市のごみ減量のキーワードです。
4R体験講座では材料にびんや布、木材などの廃棄物の再生品を利用しており、モノづくりの楽しさと同時に資源循環を学べます。講座のメインとなるのは再生ガラスを用いたワークショップ。併設された吹きガラス工房では飲料びんを原料とした再生ガラスを高熱で溶かし、グラスや皿などを作る吹きガラス講座を行なっています。吹きガラス講座は一般的に5,000〜6,000円位の受講料がかかるそうですが、しずもーる西ケ谷では1回1,540円とリーズナブルに楽しめます。
さまざまな色のガラスを組み合わせてネームプレートや箸置きなどの小物を作るフュージング体験も人気があり、すぐに定員になってしまうとのこと。また、ガラスに高圧で砂を吹きつけて模様を描くサンドブラスト体験もできます。
最近では材料に再生銀を使ったシルバーアクセサリー作りも人気です。
ほかには間伐材を利用し、電熱ペンで木を焦がして絵を描くウッドバーニングや再生紙のクラフトテープを編んで手軽にバッグなどを作るクラフトバンド、布おもちゃなどの講座があります。館内に各講座の作品が展示されていますので、何を体験しようか迷ったときには展示物を見て検討するのもよいかもしれません。
2階には、つるし飾りの制作やウッドバーニングなどリサイクル工芸の講座を体験できる市民活動スペースやイベントホールがあります。
つるし飾りのお試し体験(2時間位)で制作できるのは飾り1個分とのこと。完成までにはかなりの時間がかかりそうですね。「やりたかったけれど、どこでできるのかわからなかった」という方もいらっしゃるそうで、しずもーる西ケ谷の講座を見つけ通い続けている方もいるそうです。
イベントホールの一角には書籍のリユースコーナーを設置。本棚に並んでいるのは、不要になった書籍を持ち寄ってもらった古本です。自由に閲覧できるのはもちろん、欲しい本があれば、どなたでも1か月につき1冊、持ち帰ることができます。
また、駐車場を利用して行なわれるフリーマーケットも地元の方が楽しみにしているイベントの一つです。
しずもーる西ケ谷のイベントの中でもユニークだと思ったのは、工芸体験をしながらパートナー探しができる「ガラス工芸で婚活」。2018年10月に女性は40〜55歳位、男性は45〜60歳位の方を対象に昼食や足湯付きで開催されました。こうした婚活イベントは年2回開催されているそうです。
地元民に親しまれている温泉足湯
取材の最後に屋外の足湯に案内していただきました。足湯の後方に見える山は牛ヶ峰(高山)といい、ハイキングコースもあるそうです。
足湯にも内湯と同じ温泉を用いており、名簿への記入は必要ですが、無料で利用できます。常連さんで賑わっており、ほとんどの人が自ら持参した「マイ座布団」を敷いていたのが印象的です。皆さんとても楽しそうで、この足湯が地元の方に親しまれていることがうかがえました。
取材を通じて、しずもーる西ケ原は天然温泉を利用した温泉や足湯、あるいはガラス工芸などの体験講座を楽しみながら、4Rや環境保全について考えるきっかけになる施設だと思いました。温泉ファンはもちろん、何か新しい習い事を始めたい方もぜひ利用してみてください。
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