ケイズハウス伊東温泉(K’s House Ito Onsen)
登録有形文化財のホステルで100%源泉かけ流しを楽しむ
元は老舗旅館、リーズナブルに宿泊できる外国人向けゲストハウス
伊東駅から徒歩7分ほどの松川沿いには古い木造建築が並んでいます。その一つは伊東市の文化施設となった「東海館」。その隣にあるのが外国人向けのホステル「ケイズハウス伊東温泉(K’s House Ito Onsen)」です。築100年以上を経た建物は国の登録有形文化財に指定されています。
ケイズハウス伊東温泉は外国人旅行者やバックパッカーを対象にリーズナブルに宿泊できるホステルとして平成22年にオープン。大正末期に建造され、平成19年に閉館した老舗旅館「いな葉」の木造建築と温泉を継承しています。
日本人も宿泊することができますが、ゲストの約8割が外国からの旅行者。文化財の客室に泊まり、伝統的な日本建築や源泉かけ流しの温泉など、日本文化を体験することができます。
厳選された材木や銘木が使われた館内は、元老舗旅館の風格が感じられ、古き良き時代の日本建築に親しむことができます。
よく磨き込まれた玄関ホールの床にはケヤキの広幅板を使用。板だけで1,000万円の価値があると言われ、今ではとても貴重なものです。
玄関ホールの奥にゆったりとしたラウンジを備え、夜はゲスト同士の交流の場となります。松川側に面した温かみのある空間にはコタツも置かれ、くつろげる雰囲気。客室や共有スペースではWi-Fi(無料)が利用できます。
1階から3階に一般客室やドミトリールーム(相部屋)があり、全19室それぞれ意匠が異なります。
昭和の風情を楽しめるのはもちろん、障子や床柱など随所に職人の技が施され、古い日本建築の美しさを堪能できます。また、客室にテレビはないので、テレビが見たい時は共有スペースへ。
2階の53畳の大広間も見事で圧倒されます。中央の仕切りの欄間には地元出身の彫師・森田東光氏による彫刻が見られ、床柱には太い槐(えんじゅ)が使われています。また、格子状の天井も印象的です。
4階部分に当たる望楼にのぼってみました。クラシカルな空間が広がり、伊東市街を眺めることができます。この望楼は「油差し」と呼ばれ、当時評判の大工によって昭和4年に建造されたもの。
お隣の東海館にも同じような望楼があり、当時の持ち主が高さを競うようにして増築したものだそうです。2つの望楼が並ぶ姿は実に風情があり、伊東温泉街のシンボルとも言えるでしょう。
こちらは2階の共同洗面所。昭和初期のものだと思われる繊細な色合いのタイルが素敵です。歴史のある建物を訪れると、今ではなかなかお目にかかれない貴重なものを見ることができるので、うれしくなります。
源泉かけ流しの大浴場には、文福茶釜の湯口
館内見学のあとは、湯友の飯出敏夫氏とともに男女別の大浴場へ。見どころは地元出身の彫師・森田東光氏による湯口です。
森田氏が手がけた湯口はお隣の東海館で拝見したことがありましたので、こちらでも楽しみにしていました。
文福茶釜のタヌキの湯口からは、ドバドバと自家源泉が湯船に注がれています。微笑んでいるような表情のタヌキの口から源泉が流れ出ていて、とてもユニーク。森田氏の遊び心が感じられる作品です。
ケイズハウス伊東温泉のお風呂は2本の自家源泉を使用。52℃の源泉と30℃の源泉をミックスしているため、温度のバランスが良く、加水や加温を行なわない「100%源泉かけ流し」を楽しむことができます。
泉質はカルシウム・ナトリウム-塩化物温泉。39〜40℃位の温めのお湯で実に気持ちが良いのです。お風呂から上がろうと思っても、なかなか上がることができない魅惑の温泉でした。それは飯出氏も同じだったようです。
女湯にも森田氏による文福茶釜のタヌキの湯口がありました。こちらは太いしっぽを立てて、愛嬌たっぷり。こうしたものが外国人の方にどう映っているのか気になりますね。
大浴場のほかに貸切風呂もあり、空いていれば自由に入れます。大浴場に抵抗のある方も、貸切風呂ならゆっくり入れそうですね。
また、館内には自炊可能なキッチンを備え、連泊も可能。洗濯機や乾燥機なども備えています。
ケイズハウス伊東温泉に訪れる多くの外国人の方は、古い日本文化に対してリスペクトがあり、客室やパブリックスペースをていねいに使ってくれるそうです。
老舗旅館がホステルとして生まれ変わり、世界中の旅行者の方が日本文化とともに伊東温泉を体験できるのはとても素晴らしいことだと思います。日帰り温泉や館内見学もできますので、ぜひ一度訪ねてみてください。
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