禅の湯 伊豆・天城温泉
「モダン宿坊」で100%源泉かけ流しと岩盤浴を楽しむ
アットホームな空間で心身ともにリフレッシュ
伊豆急行線河津駅から車で約10分。天城方面に向かう下田街道沿いにある「禅の湯(ぜんのゆ)」は、深い山に囲まれた慈眼院(じげんいん)の敷地内にある湯宿です。慈眼院は古くから参拝者や旅人を泊める宿坊であり、1857年(安政4年)にはアメリカ初代駐日総領事のタウンゼント・ハリスが宿泊したことでも知られています。
住職の家族が運営する禅の湯は、白を基調とした和モダンな宿で、前身のユースホステルをリニューアルし、2007年から営業をスタートしました。自家源泉かけ流しの温泉や岩盤浴、野菜たっぷりのヘルシーな創作料理などを楽しめます。
宿のコンセプトは育てる・育ち合うという意味の造語「育(いく)する」。「食」、「地域」、「子供」、「仲間」、「夢」など、さまざまなテーマの「育する」に取り組んでいるユニークな宿です。
温泉愛好家が自己資金で掘り当てた自家源泉
清潔な浴室で飲泉も可能!
まずは禅の湯の温泉と岩盤浴を紹介しましょう。禅の湯には男女別の浴室があり、それぞれの内湯と露天風呂に敷地内から湧出する自家源泉を利用しています。
湯口から湯船に注がれる源泉は加水や加温、循環、消毒なしの100%かけ流しで、泉質はカルシウム・ナトリウム-硫酸塩温泉。pHは9.0と高いアルカリ性で少しツルツル感のあるお湯です。また、湯口にはカップが置かれ、飲泉もできます。
この源泉は温泉好きの運営責任者が自己資金をかけて、敷地内で繰り返し掘削し、2005年に地下750mのところで掘り当てたもの。なかなか温泉が掘り当てられず苦労の連続で、資金が尽きかけ諦めかけたタイミングで湧出したそうです。掘り当てたその日は伊豆で一番古いと言われる修善寺の霊泉・独鈷の湯(とっこのゆ)を弘法大師が発見した時から1200年目。しかも弘法大師の命日だったため、ご利益を感じたそうです。温泉マニア的にはこうしたお話を伺い、素晴らしいと思いました。
特に禅の湯の温泉では露天風呂が気持ちよくて印象的でした。源泉かけ流しのお湯と向かいの山々から吹いてくる風が本当に心地よいのです。取材同行してくれた湯友の湯達入郎(ゆったりはいろう)氏とともに開放的な雰囲気と湯遣いの良さを楽しみました。湯船の脇に用意されたリクライニングチェアでクールダウンできるところも良いですね。
また、脱衣所に用意された冷水は、温泉を掘り当てたときに同時に汲み上げた天然水。美味しい天然水でのどを潤すことができます。
岩盤浴「石の湯」は新潟の胎内石やトルマリン、カルシウム石などの石をバランスよく敷き詰めた敷石サウナ。ゆったりとした空間の中で遠赤外線とマイナスイオンにより、デトックス&リラックスができます。
禅の湯の温泉と岩盤浴は立ち寄り入浴でも利用ができます。利用時間の制限はありませんので、ゆったり過ごせそうですね。ヘルシー創作料理が楽しめるランチやディナーとセットになった入浴プラン(要予約)もおすすめです。
客室は居心地の良いシンプルな空間
禅の湯の客室は全14室あり、和洋室からバリアフリーの洋室、6畳〜14畳の和室を用意。2011年に全室リフォームした居心地の良いシンプルな空間です。和室の布団敷きはセルフサービスになっており、8畳と10畳の和室は広縁付き。ゆったりとくつろげる雰囲気です。
野菜たっぷりの創作料理とさまざまなオプションメニューを用意
禅の湯の食事の基本は野菜を中心としたヘルシーな創作料理。極力農薬を使わない自家菜園の採れたて野菜や地場野菜、自家製3年味噌などを使った身体にやさしい料理が楽しめます。金目鯛料理や地魚のお造りなど、伊豆の味覚を思いっきり楽しみたい方にはさまざまなオプションメニューやプランを用意。冬は天城山のいのししを使った「しし鍋」もおすすめだそうです。
また、坐禅体験やヨガができるのも禅の湯の魅力の一つ。禅の湯の隣、慈眼院で日曜の朝7:00から45分、坐禅を行なっており、宿泊者の方も参加できます(1人1,000円)。また、本堂や宿の畳の部屋でヨガ教室(90分/1人1,000円)を水曜日の午前中に開催しています。
慈眼院本堂の天井には、宿坊に泊まった旅の絵師が「一夜のお礼に」と描いたと伝わる龍の絵が掲げられています。迫力がありますので、ぜひこちらも鑑賞してみてください。
禅の湯は、夢の実現を応援する宿
禅の湯ではさまざまな宿泊プランを用意していますが、そのなかでユニークなのが「禅の湯スタッフ体験プラン」です。これは伊豆で暮らしたい人や自分を見つめ直したい人などが禅の湯でスタッフ体験をしながら過ごすというもの。自分と向き合い、心の中にかかえているものを整理する場になるそうです。現在、禅の湯では10人の移住者スタッフがイキイキと働いています。こうした禅の湯の「人や夢を応援する」取り組みが評価され、地元企業のコンテストでサービス革新部門の最優秀賞を受賞しました。
禅の湯が非日常や癒しの空間を提案する一般的な宿泊業と異なるのは、「育(いく)する」という宿のコンセプト。こだわりの温泉はもちろんですが、育(そだ)てる・育ちあうという宿の考え方がとても気に入りました。今度はプライベートで再訪したいと思います。
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