食堂富士屋
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知る人ぞ知る、アットホームな蕎麦処
修善寺の路地に佇む“隠れた名店”
名物は極太蕎麦!「もり蕎麦」と食べ比べがおすすめ
修善寺温泉の中心街から少し離れた路地裏に佇む「食堂富士屋」。付近に看板もなく、教えられて探さないとまず出会うことのない名店です。ここは、この近くに住むスルガ銀行の社員から、「ホントに美味しいから、ぜひ行ってみて!」と薦められたお店。まるで民家の玄関にのれんを掛けたような外観ですが、そののれんをくぐると、どこか懐かしく温かな空気が流れ、店内には常連さんから贈られた編みぐるみや手作り小物が飾られています。
「食堂富士屋」は、公務員を定年退職したご主人が、2016年(平成28年)に開店。築年数を感じさせる木造の建物は、かつて芸者屋敷として使われていたとのこと。「親戚が所有していたのですが、京都へ引っ越してしまったので、管理がてら改装してお店を始めたんです」と接客を担当する娘さんが教えてくれました。
「もとは趣味で始めた蕎麦打ちでした。始めた頃は親戚へのお年賀やお歳暮で配っていたんですよ」とご主人は笑顔で語ります。やがて「人に料理を振る舞いたい」という思いが高まり、店を構えることに。今では地元の常連さんを中心に賑わう人気店となり、休日には13時前に蕎麦が完売することも少なくありません。ご主人がひとりで打つため、用意できるのは1日25食前後。確実に味わうには事前予約がおすすめです。
ネット上の口コミを見ると、「とても美味しくて、観光地なのにリーズナブル」と好評価なものがかなり多いですが、「行き方が難しい」というようなコメントもありますので、「小坂町」の看板を目印にしてください。
写真に写っている「小坂町」と書かれた看板が目印です。この路地(「Hostel Knot」の手前の道)を入り、約30m先の左手にあります
「食堂富士屋」の名物といえば、なんといっても極太の「太い蕎麦」。箸で持ち上げると重量感があります。「シャレで考えたんですよ」とご主人は笑いますが、インパクトがあるメニュー。塩をほんの少しつけていただけば、噛むごとに蕎麦の香りと旨みが楽しめます。仲間とシェアしたり、もり蕎麦とセットで食べ比べるのが常連のお客さんの定番だそうです。
「食堂富士屋」の蕎麦は二八の手打ちで、つるりとした喉ごしが自慢。宗田節を使ったつゆは濃いめの田舎風で、豪快に浸して食べれば素朴ながらも深い味わいが広がります。「一流店のように少しだけつけて…なんてことはしなくていいですよ。ここでは好きなように浸して食べてもらうのが一番」とご主人は話します。
さらにおすすめなのが「お通しのデザートセット」。一口ご飯とサラダチキン、お漬物に加え、蕎麦の実を使った羊羹まで付いたセットです。「蕎麦だけでは少し物足りない」という方にぴったりで、軽いおつまみ感覚で楽しめるのもうれしいところ。
「つけとろろ蕎麦」は、常連さんに人気の一品。とろろと出汁を合わせたつけ汁に蕎麦をくぐらせていただきます。蕎麦を食べ終えた後の〆として残ったつけ汁をご飯にかけると、とろろと出汁の風味が絡み合い、また違った美味しさが楽しめます。一度で二度おいしい“通好み”の蕎麦です。
蕎麦を堪能する井伊湯種(いいゆだね)
「一口ご飯」や「合鴨焼き」など“蕎麦前”も楽しめます!
蕎麦を待つ間にぜひ味わいたいのが、“蕎麦前”の小皿料理です。
まず目を引くのは「一口ご飯」。海苔の上にご飯と具材をのせたもので、甘口と辛口の2種類を用意。ひと口サイズながら見た目のインパクトがあり、SNSやインターネットで写真を見て来店し、注文する人も少なくないとか。「おにぎりにするのは面倒くさいからね」と笑うご主人ですが、遊び心あるスタイルがこの店らしさです。
また、伊豆といえば、わさびも有名。「合鴨焼き」はかえしを使った甘辛だれを絡めた合鴨に、おろしたてのわさびがのせられており、口の中にわさびの爽やかな香りが広がります。使用するのは天城の「山口わさび」。清流が育むわさびは辛みだけでなく、旨みや甘みがしっかりと感じられる逸品です。
低温調理で仕上げた「砂肝煮」もおすすめ。本来、歯応えがある砂肝ですが、低温調理のおかげで驚くほどやわらかく、醤油と生姜の風味が染み込んだ味わいはクセになる美味しさです。
これら“蕎麦前”の一品と相性抜群なのが辛口の日本酒。こちらでは静岡県藤枝市の地酒「志太泉」をいただくことができます。昼から軽く一杯楽しむのも粋ですね。
「肉シチューごはん」も思わず気になって注文してみました。見た目はビーフシチューのようですが、使っているのは豚のタン。じっくり煮込んだお肉はとろとろで、スプーンでほぐれるやわらかさです。濃厚なソースとご飯の相性も抜群で、「まさか蕎麦屋でこんなひと皿に出会えるとは」と驚かされます。
また、子ども連れでも楽しめるように「カレーライス」や「お子様カレー」「チキンライス」「チャーハン」「ミートソーススパゲッティー」といったバラエティ豊かなメニューも用意されています。大人は蕎麦を堪能し、子どもは好きなものを味わえる――そんな工夫が、常連さん達の満足度に繋がっているようです。
元芸者屋敷を改装した趣ある空間
修善寺を訪れたら、また立ち寄りたい食事処でした
「特別な高級食材は使っていません。でも、誰にでも美味しく、手頃に食べてもらいたい」。そう語る店主の料理には、派手さはなくとも確かな技と温かみがあります。蕎麦はもちろん、小鉢や丼に至るまで、一つひとつに心のこもった手仕事が感じられました。
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