陶芸の宿 はなぶさ  伊豆長岡温泉

息子たちの頑張りで料理の評判が上々です

次世代とともに「はなぶさ」の価値を高めていきたい

「はなぶさ」のご主人、花房孝光さんに宿の歴史や料理へのこだわり、今後の抱負などをお伺いしました。

はなぶさ館主

「はなぶさ」ご主人、花房孝光さん


「開業は昭和31年。旅館が建つ前は田んぼでした。当時は温泉ブームでどこを掘っても良かった時代です。当館では温泉を3本掘って2本、温泉が出ました。その時は7〜800メートル位の深さで温泉が出たと聞いています。伊豆長岡温泉は全国で初めて温泉の集中管理方式を始めてから30年ほど経ちました。当館は2本の源泉(権利)を持っているため、お湯は豊富に使えます。最初は7部屋でスタートし、これまで7回くらい建替えや増築を行ない、一番多い時で45部屋ほどありました。今は20部屋で営業しています」とご主人。

先代は美術好きで、旅館の経営者としては地元のお客さまを大切にする人だったといいます。
「抹茶茶碗がつくりたくて先代が陶芸教室をつくったのが今から35位年前。その当時、陶芸体験ができるところは伊豆高原の施設と当館しかありませんでした。20年位前にカルチャーブームが起き、陶芸を体験する人が増えてきて、そのとき初めて陶芸教室をつくって良かったと思いました」。

陶芸教室入口

館内に併設された陶芸教室「源氏窯」入口


館内には先代がコレクションした美術品が至るところに飾ってあり、美術館の中で過ごしているような感覚を楽しめる「はなぶさ」。宿泊者は陶芸体験もできるユニークな宿です。

はなぶさ 花房氏と湯種

快活な印象の花房氏とお話を伺う井伊湯種

ワインに合う和食やA5ランクの和牛ステーキ

ご主人とご長男の光宏さん(三代目)がワインソムリエの資格を持ち、ワインに合う和食を楽しめるのも「はなぶさ」の特色です。
「伊豆半島で一番ワインをお出ししている宿は当館かもしれません。そんなに高価なものではなく、手頃な価格で楽しめるワインを提案しています。特に前菜はワインに合う料理を意識していますので、ぜひワインとともに味わっていただきたいですね。ワイン好きのお客さまとは話が合い、ワインを通じたつながりができることもあります。また、年に2〜3回は伊豆長岡温泉の若手後継者が集まってワイン会を開催し、ワインに合う料理などを研究しています」

湯種が以前宿泊したときも「料理が美味しかった」という印象がありましたが、今回はワインと和食が楽しめるようになり、食の楽しみがさらに広がりました。

おすすめの食事プランは今回のレポートで紹介した伊豆会席コース。A5ランクの和牛を使った料理や三代目が考案した「いずまぶし」などが楽しめます。

また、ご主人の牛肉へのこだわりも印象的でした。
「A5ランクの和牛ステーキが楽しめるコースもおすすめです。当館で初めてステーキをお出ししたのは10年位前。伊豆半島では伊勢海老やあわびを出すところは多いですが、肉をメインに出しているところはあまりありませんでした。ステーキを出すきっかけになったのは、九州の湯布院の宿に泊まった際に食べた夕食です。豊後牛(ぶんごぎゅう)をステーキにするか、しゃぶしゃぶにするかと聞かれ、そのときはたまたまステーキを食べたら、とても美味しくて感動しました。自分の宿でも美味しいステーキを出そうと、肉屋を呼び、良い肉を持ってきてくれるように頼みました。しかし、なかなか良い肉が手に入らなかったり、入荷しても継続が難しかったり、苦労を重ねました。しかし、最近では地元静岡にA5ランクの美味しい肉がいろいろ出てきたのでうれしくなって、それらを使っています。ステーキコースは肉の原価を考えるとお値打ち価格で楽しめると思います」

自家製温泉まんじゅうや「とろろ家」を始めた理由

また、「はなぶさ」では黒糖温泉まんじゅうの製造販売や平日に限り麦とろの昼食が楽しめる「とろろ家」を経営しています。
「はなぶさ」の近くには昭和42年に設立された順天堂大学医学部付属静岡病院があり、その来院者が少しでも利用してくれたらという思いがきっかけでした。

はなぶさ 温泉まんじゅう販売

旅館前のお店で自家製黒糖温泉まんじゅう「ひと花」を販売


「病院に訪れる方のうち、5%の人が訪れてくれれば良いと考え、平日の宴会場を利用し、とろろ家を始めました。昼食のみの営業です。今は口コミで情報が広がり、病院に訪れる方だけでなく、バスの運転手さんやガイドさんなど、いろいろな方が利用してくださっています」

はなぶさ とろろ家入口

とろろ家入口

こうした温泉まんじゅうの製造販売やとろろ家の経営は旅館業とは異なる「はなぶさ」の魅力を高めていきたいという考えもありました。
  
今後の抱負は「はなぶさ」の価値や魅力をさらに高めていくこと。
「板前の息子たちの頑張りもあり、料理の評価は上がっています。今は世代交替の時期。当館は後継者がいるから幸せです。熱海や伊東のように伊豆長岡も地元の旅館がなくなってきていますが、私のところを含め次世代がいるところが何軒かあります。そうした旅館と協力しながら伊豆長岡の魅力を高めていくのはもちろん、息子たちと協力しながら、はなぶさの魅力を高めていきたいと思います」

→次は宿の情報です

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