天城湯ヶ島温泉 白壁荘
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天城湯ヶ島の文化を守っていきたい
宿泊した当日、ご主人の宇田さんと語らいの時間を持つことができました。客室「紺屋」で、旅館のことや文人との関わりなどについてお伺いしました。
白壁荘は、民芸・民話をテーマとして1944年にご主人の先代が開業した老舗旅館。湯ヶ島の文化・特色を大切にした宿として、これまで先代がつくったものを守ってきたといいます。
「私どもと作家・井上靖先生は親戚の間柄で、当時東京にお住まいになっていた井上先生と連絡をとる場合など、天城湯ヶ島町の窓口を先代が務めておりました。井上先生は、毎年欠かさず8月1日に、祖母のかのさんのお墓参りに湯ヶ島にお越しになっていたのです。その際は当館をご利用になり、同窓会を開いていらっしゃいました。同窓会が終わると地元の方は帰られますが、その後、先生はお気に入りの客室「あまんじゃく」の囲炉裏で、先代とブランデーを飲むのを楽しみにされていたようです。
2人ともお酒が強く、私が新しいボトルをお届けした時に先生から『君は湯ヶ島の人間だろう。伊豆には文化・文学がある。地元の人間として勉強しないといけないよ』と言われ、万葉集から2首ほど教えていただいたことがあります。それがきっかけで、改めて湯ヶ島の歴史・文化を勉強するようになりました。現在も地元の文学散歩の案内などの活動を続けています。
また、劇作家の木下順二先生とは部屋に「夕鶴」という名前を付けたことからお越しいただけるようになり、開業当時から常連のお客さまになっていただけました」
ロビーには、毎年、白壁荘に投宿していた井上靖の生原稿や写真が展示されています。
また、接客についてのこだわりをお伺いすると、「お客さまには豊かな自然の中でゆっくりしていただくのが一番。気取らず家庭的な雰囲気でお客さまに接するようにしています。宿のテーマが民芸・民話ですから、お客さまが田舎に帰ってきたと感じるような雰囲気作りをしたいのです。都会の雑踏から逃れ、温泉で裸になって、じっくり疲れを癒してほしいですね」
民芸調のアットホームな雰囲気、身体に染み入るような温泉、そして郷土料理…。天城湯ヶ島の自然の中で非日常を堪能してリフレッシュできる宿だと思います。