湯ヶ島温泉 落合楼村上

リニューアルして名称が『おちあいろう』になっています。価格体系等も変更がありますので、詳しくは宿の公式HPをご参照ください。

国登録有形文化財の老舗旅館で美肌・保湿の湯、
そしてお料理に感動!

今回、井伊湯種が訪れたのは、伊豆半島中部 天城湯ケ島温泉郷にある「落合楼村上」。
古くから多くの文人墨客が訪れ、時代の流れと共に歴史と伝統を培ってきた老舗旅館です。日本の様式美に彩られ、木造建築の9割が国の有形文化財に登録されているお宿についてレポートします。

川端康成や北原白秋も訪れた文人墨客ゆかりの宿

新緑の眩しい中、熱海方面から車を走らせ、天城湯ケ島温泉郷へ。緑が深くなり、川のせせらぎが聞こえてくると、今回の目的地までもうすぐ。門をくぐり、庭園の少し先の道を通り抜けると、昭和初期の佇まいをそのまま残した「落合楼村上」がありました。

落合楼村上

落合楼村上

落合楼村上の玄関に一歩足を踏み入れると、そこはすでに別世界。古民家を移築したというラウンジでウェルカムドリンクの梅ジュースをいただき、クラシカルな「和」と「モダン」が調和した空間に目を見張りました。

落合楼村上 玄関

落合楼村上の玄関。土間の奥はすべて畳になっている

落合楼村上 本館前

本館の前には庭が広がる

「落合楼」の創業は明治7年。当初は「眠雲楼」と名付けられたそうです。旅館が伊豆半島を流れる狩野川の起点、本谷川と猫越川の「落ち合う」場所にあったことから、逗留していた旧幕臣の山岡鉄舟の提案で「落合楼」に改名。田山花袋、島崎藤村、川端康成、など多くの文人墨客が訪れた宿としても知られています。
昭和に入ってからは北原白秋が訪れ、20日間ほど滞在して歌作に専念されたそうです(逗留中に書かれた「雀百まで」がメインロビーに展示されていますので、要チェック)

落合楼村上 川

川と川が落ち合うところに建つ

7つの国登録有形文化財
細部にまで職人の技と粋

「落合楼村上」の木造建築の9割が国登録有形文化財。昭和8~12年に大改装が行われ、この時、建てられた建築物が国の文化財に登録されています。玄関棟、本館、眠雲亭、配膳室階段棟、紫檀宴会場、書斎(読書室)等の7棟が国登録有形文化財。建物が文化財に登録されている旅館はとても珍しいそうで、さらに客が宿泊する各部屋や宴会場、階段まで個別に指定されているのは驚きです。

落合楼村上 有形文化財の階段

有形文化財の階段棟

組子細工の障子、階段、柱、鉄瓦、宴会場縁側の手づくりの窓硝子など、いたるところに当時の職人たちの「技と粋」を見ることができます。
総桧造りの本館は、各室床の間と床脇の棚が具えられ、部屋によっては付け書院を設けているそうです。本館が格調を重んじた造りなのに較べ、眠雲亭は数寄屋造りの趣き。また、眠雲亭各室は源氏物語の各巻から名付けられ、欄間にはこれに因んだ模様が桐板に透し彫りにされています。こんな丸ごと文化財のお宿に泊れるのはとても贅沢で貴重なこと。ますます期待が高まる井伊湯種でした。

落合楼村上 職人技の館内

細部にまで職人技が施されている落合楼村上の館内。微妙にゆがんで見える窓硝子はもう二度と作れない

落合楼村上 紫檀の間

108畳の紫檀の間

落合楼村上 本館「松一」

本館「松一」の間の組子細工は、富士山と、金運や幸運をすくいとるという投網の縁起柄

落合楼村上 石南花の間

以前のオーナーの自宅だったという石南花の間。蜘蛛の欄間が見事

お部屋は狩野川を眼下に望む
源泉かけ流しの足湯付き

4000坪の敷地内に、お部屋は眠雲亭(3タイプ)との本館(5タイプ)に分かれていて、それぞれ異なった趣きになっているそうです。
私が泊めていただいたのは、本館1階の「椿一」(本間10帖+前室2帖+化粧の間2帖+広縁2帖)。狩野川に面した和の情緒あふれる美しいお部屋です。建築様式は総桧の書院造りだそうです。

落合楼村上 客室「椿二」

足湯付きの客室(画像は「椿二」)

しかもうれしいことに源泉かけ流しの足湯付き。さっそく試してみたところ、眼下に狩野川を望み、聞こえてくるのは川のせせらぎと野鳥のさえずりだけ…。目の前の木々の緑にも癒され、足湯に浸かりながら、しばし日常から離れることができました。当日はこの季節にしては気温が低く、寒かったので、お部屋の畳にしつらえた床暖房が快適でした。

落合楼村上 客室足湯

客室の足湯は24時間入れる

また、このお部屋は隣室の「椿二」とコネクティングルームとしても使うことができます。2組のご家族や三世代ファミリー、5~6人の女性グループに人気だとか。こうしたお部屋は4部屋あり、こうした仕様は「落合楼村上」ならでは。お客さまの層を見ながら、快適に滞在していただけるよう落合楼村上のご主人と女将さんが考案されたそうです。

落合楼 ロードバイク

大切なロードイクも客室内に保管できます

お風呂はすべて源泉かけ流し!
開放感のある「天狗の湯」

昔からお湯に恵まれてきた天城湯ケ島温泉郷。豊富な源泉から引かれた「落合楼村上」の温泉は、もちろん源泉かけ流し。狩野川沿いに「天狗の湯」「レトロモダンタイル風呂」「貸切大露天風呂」があり、いずれも広々として気持ちがいいです。透明でクセのないお湯ながら、注目すべきは美肌力。保湿の湯としても人気です。

まず、天城の天狗も入りに訪れたと言われる落合楼村上の「天狗の湯」に入ってみました。開放感のある露天風呂はお湯がやわらかく、川のせせらぎをBGMにいつまでも入っていたくなるような温めでした。一見内湯と思われた、湯けむりに包まれた洞窟風呂は露天風呂に直結しており、互いを行き来できるようになっています。
神秘的な洞窟風呂の奥には自家源泉の「大滝の湯」が文字通り、流れ落ちています。温度がそれほど熱くないため、上から落ちてくる源泉かけ流しを打たせ湯のように使ってみたり、修業者のように頭から打たれてみたりなど、楽しいひとときを過ごしました。

落合楼村上 露天風呂「天狗の湯」

風情あふれる落合楼村上の露天風呂「天狗の湯」

落合楼村上「洞窟風呂」

奥の「洞窟風呂」と行き来できる

洞窟風呂に流れ落ちる大滝の湯(源泉)

洞窟風呂に流れ落ちる大滝の湯(源泉)

天狗の湯。別の角度から。奥は入口

天狗の湯。別の角度から。奥は入口

半露天風呂付きの「レトロモダンタイル風呂」

10人が同時に入れるほどゆったりした「レトロモダンタイル風呂」には、半露天風呂が併設されていて、これもまた風情がありました。

ゆったりとした「レトロモダンタイル風呂」

ゆったりとした落合楼村上の「レトロモダンタイル風呂」

落合楼 レトロモダンタイル風呂

「レトロモダンタイル風呂」には半露天風呂付き


※チェックインから午前0時まで「天狗の湯」は男性専用、「レトロモダンタイル風呂」は女性専用に。午前0時から翌朝チェックアウトまでは「天狗の湯」は女性専用、「レトロモダンタイル風呂」は男性専用になります。(2013年4月取材時)

無料で入れる落合楼村上の貸切大露天風呂は予約制。もともとは女性用のパブリックバスだったというだけあって、貸切風呂といえども7つの洗い場を備え、ゆうに20人は入れる広さ。利用時間は40分ですが、こちらでも渓流の音に耳を傾けながらまったりと過ごせる空間です。

落合楼村上「貸切大露天風呂」

「貸切大露天風呂」の広さは約3メートル

三大美人泉質の一つ、硫酸塩泉
女性にうれしい美肌と保湿の湯

注目すべきは風呂上がりのお肌の状態です。お肌が乾燥しやすい湯種はいつも風呂上がりにはクリームを使用しているのですが、何もしなくても突っ張らずに良い感じ。落合楼村上のご主人にお聞きしたところ、「私どもの温泉には保湿効果があるという成分が多く含まれています。以前、温泉ソムリエの方に泉質を見ていただいたところ、保湿の湯であるということで、メディアに紹介していただきました」とのこと。なるほど、納得です。

古くから「三大美人泉質」と呼ばれている泉質には「炭酸水素塩泉」「硫酸塩泉」「硫黄泉」があります。落合楼村上の温泉の泉質は、その一つに該当する「カルシウム・ナトリウム・硫酸塩泉/芒硝泉」のため、化粧水のような保湿が期待され、塩の成分が薄いヴェールのように肌を包み、肌の水分や熱を保ちやすくします。そのため、湯あがり後も肌がしっとり、湯冷めもしにくいのだとか。外が寒かったため、少し湯冷めが心配でしたが、身体のほかほかは継続しました。

pHは湯種の計測では8.5の弱アルカリ性(天狗の湯)。美肌・保湿のほかの効能としては、動脈硬化の予防や高血圧、神経痛、筋肉痛、関節痛、ねんざ、慢性消化器病、痔、冷え症、慢性皮膚病、アトピー性皮膚炎、疲労回復などに効果的とのことです。

お湯が豊富な天城湯ケ島、
自家源泉は4本!

温泉マニアなら源泉についても気になるもの。「落合楼村上」の温泉は、4つの自家源泉を利用されているそうです。さすが温泉が豊富な天城湯ケ島ならでは…と感心し、源泉についてそれぞれ伺いました。
1つ目は「天狗の湯」に流れている「大滝の湯」。温度は44℃前後で、温泉を適温に保つため、気温によって加水や加温を行って調整しているそうです。

2つ目は、川の中から自噴している源泉が「落合の湯」。現在では出る量が減ったものの、かつては川の中を掘れば簡単に温泉が出てきたそうです。現在、60~70代の方の子ども時代は川を掘って温泉に入ることができたのだとか。こうした野湯系が大好きで、そのために車に常時スコップを用意している井伊湯種としてはお話を聞けば聞くほど、うらやましく感じました。

3つ目は向かいの山の山頂から100メートル掘って汲み上げた「釜石の湯」。温度が58℃あるため、客室内のお風呂も含め、このお湯を混ぜて適温にできるそうです。

4つ目は湯ケ島財産区が管理している共同源泉から。これは、かつてこの付近の旅館がそれぞれ持っていた源泉を一つに統合したもので、現在でも毎分1000リットルのお湯が出ているとのこと。41~42℃のお湯で、かつての自家源泉から噴出する量を割当分として使用されているそうです。

次はお食事についてレポートします!

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